表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/111

ゼラハとの戦闘

▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


コールはダーノとシーノを安全な場所まで運ぼうとしていた。しかし、この部屋に入ってきたドアはロックがかかっていた。


「コールの言うこと、正しかったね。」


「うん。まぁ、今更そんな言葉もいらないからな。」


「ゼラハが入ってきたドアなら開くのではないかね?」


「なら、結局あいつを倒してからと言うことになりますね。」


コールはダーノと話すとき敬語になった。シーノはボソッと


「コール、敬語似合わない。」


「何で今言う?お前は。」


(こいつ、態度コロコロ変えすぎだろ!)


コールは言いそうになった言葉を心の中で叫んだ。


「彼のことはいいのかい?」


ダーノはコールに心配そうに言った。レアンのことをいっているのだろう。コールは笑いながら


「アイツは大丈夫です。むしろ負けるところが想像できないくらいに。」


「少なくともコールよりは強いしね。」


「なんかお前は変わったな。」


(嫌な意味で。)


ダーノはこのやり取りを嬉しそうに見ていた。だが、そんな余裕は一気に消えた。何かがこちらに向かってくる。


「いつかは来ると思ってたけど、流石に不味いな。」


指示がもらえず動いてなかったΓが自己判断でこちらに向かってきた。通常よりデカイ蠍に移植されたであろうΓは、蠍の背中から刀を二本取り出した。

コールは赤くて丸い球体を取り出し、Γに投げつける。蠍のハサミ部分に当たった瞬間爆発した。煙が上がり見えなくなる。煙から突如ハサミが出てくる。コールは後ろへ飛びギリギリ避ける。


「あっぶね!」


「コール、ボクも戦うよ。」


「近づくのは止めろよ。」


シーノはダーノの前にたち守るようにしながらギフトからミニガンを取り出す。


「食らえ!」


シーノは人間の方を狙い撃ったがまたもハサミによってはじかれた。


「硬い!」


「爆弾食らわないんだ。あたり前だろ。だが、片手は防御で使えなくできる。続けてくれ。」


シーノは頷きΓの方へ向き直る。コールは

Γの方に走っていった。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


レアンはαに向かって走り出した。αもレアンが視界に入りまた、銃を撃ち始める。レアンは弾を紙一重で避けながらαとの間を詰めていく。横からの魔法による攻撃は全て槍によって弾く。どれだけ大きい魔法の弾でも、どれだけ重い氷でも、物理的に触れられない炎でも、その槍は弾いているのである。


「くそーー!」


ゼラハも焦っている。まず、走りながら銃の弾を紙一重で避ける時点で人外である。その上、魔法を槍で弾くなど論外である。なのにレアンはそれをやってのける。もはや、何を相手にしているのかわからなくなってきている。

とうとうαとの距離が刀身の間合いに入いる。αの使っている銃の弾は切れたらしくカチッカチッと、弾の切れた音がする。レアンは槍をαへと向ける。

槍の回転が止まっため、Σとゼラハはチャンスとばかりに魔法を放つ。炎と氷がレアンの左右からくる。前からはαのワニの部分がレアンを食らおうと大口を開けようとした。

しかし、ワニが口を開ける前にレアンが槍を振った。レアンのその槍を振る動作はその場にいるものは認識すら出来なかったのである。そして、ワニの口はレアンの三つ矛によって地面もろとも貫かれ、開くことが出来なかった。


「なっ、何なんだ、お前は!?」


ゼラハは小さな声で言った。なにかに当たるように。

レアンはそのまま刺した槍を支えとし、さながらサーカスのピエロのように逆さ向きに、そして槍より上の位置に昇った。

そのままゼラハの放った氷がワニの顔を潰す。Σが放った炎が氷とワニの顔を焼き尽くす。

レアンはワニの背に飛びうつる。そして槍を抜き取り人間部分を剣の方で切りつける。αはふらついたあとそのまま地面に倒れた。


(やっぱり人の部分が本体か。)


レアンはαの死体の上で槍についた血を払った。レアンの後ろで炎が燃え上がっている。 その姿はゼラハには悪魔のように見えた。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


コールはシーノと共にΓの攻撃をしゃがんで避けた。シーノは避けながらも銃を撃ち続けている。コールはシーノに近づく。


「シーノ、火力があって正確に狙える武器あるか?」


「あるけど、どうするの?」


「俺が囮になる。ハサミの攻撃が邪魔だからな。お前はあいつの腕の関節部分を銃で狙って撃て。関節部分はさすがに固くないだろうから吹っ飛ばせるはずだ。」


「難しいよ。それに今は、ボクが撃ち続けているから動きが鈍いだけで銃変えたら・・・。出来るの?」


「やれる、と思いたいなぁ。まぁ、頑張るさ!」


「適当すぎ。でも、分かった。」


「よし。行くぞ。」


コールは腰から鞭を出した。シーノはギフトを使い、ミニガンから対戦車用ライフルに変えた。

コールはそれを見て、ため息半分に自分の恩師を見た。


(何が護身用だよ。さっきから完全に人間相手に使う代物じゃねーかよ。

娘を守るために教えたのは何を相手することを想定してんだよ。)


Γはうまく動けなかった鬱憤を晴らすようにものすごいスピードで突っ込んでくる。コールは鞭でΓの尻尾部分に狙いをすまし、ロープを巻き付けジャンプする。そのまま背中に飛びうつる。Γは止まりコールを振り下ろそうと暴れだす。上半身は二本の刀でコールを斬ろうとする。

しかし、コールは負けじと、腰から更にタガーを取り出して応戦する。

シーノは縦横無尽に動き回っている対象の関節を狙うのは初めてだった。その上、仲間に当たる可能性がある。しかし、シーノは冷静だった。大きく深呼吸をする。そしてから息を止め、スコープ越しにターゲットを見る。狙いが定まるように対象を追い、Γの足の一つが部屋にある機械にあたり体勢が崩れ、隙ができる。シーノは透かさず照準を合わせる。そして、


「いける!」


ドォンッ! 轟音とともにΓのハサミがふっ飛ぶ。Γが痛みで暴れだす。コールは遠心力で落ちてしまった。

Γはシーノに反撃するためにこちらを見る。敵は冷静さを失っている。シーノは逆のハサミも撃つ。

またも轟音がなる。Γのハサミがもげて使い物にならなくなる。

それでもΓはシーノを狙う。Γはとうとう走り出した。シーノは残りの攻撃手段の尻尾を撃つ。しかし、尻尾は相当な強度のようで弾かれてしまう。他の場所は当てても止まらない。本体は尻尾で守られている。シーノは避けようとしたが後ろにまともに動けない父がいることから退く訳にはいかなかった。


「私のことは置いてお前だけでも逃げてくれ!」


父親の精一杯の声も今のシーノは聴こえなかった。動悸が激しくなっている。それでもひたすら撃ち続けている。止まらないΓの進撃。とうとう距離が五メートルほどになる。

その時、シーノとΓの間に誰かが滑り込んできた。レアンである。呪文を唱えながら槍を回転さていた。


「水は全てを癒す恵み。」


槍の周りに水が出現し、槍の回転に合わせて水も回転する。


「しかし、水龍の逆鱗を纏いし水は全てを流す。」


水の量が増え回転速度が速くなる。


「そして、水龍の刃は全てを絶つ。」


水の回転は余りの速さで、ただの円盤に見える。そのまま槍を回転させながら構える。


「水龍断刃」


レアンは回転させたままの槍を縦に振る。水はそれと連動して放たれた。水は一気にレアンから反対側の壁まで飛沫を上げながら突き抜けた。水が通った地面と壁に細い亀裂が入っている。Σの動きが止まる。ゆっくりとΣの体は裂けるように真っ二つになった。シーノはボーッとレアンを見詰めていた。彼の後ろ姿から何が神々しいものを感じた。レアンは振り返り


「お疲れさま。シーノ、すごくカッコよかった。」


と一言。シーノはそれでもレアンの顔を見続けた。「良いところ持ってった君に言われても。」とは答えられなかった。レアンは気にすることもなく残りの敵を見た。


「分からない。何なのだ、お前は。その技も。魔法と武器の精度も。そこら辺の達人ですら、ましてや国に仕えている魔術師すらそこまでの腕はない!」


ゼラハは自分の状況を忘れる程に動転していた。出来るのはただ叫ぶことだけだった。たが、急にゼラハが黙った。暫くすると


「・・・ハッ、ハッハッハッハッハッハッハッハッ!・・・何でこんなガキに俺の十年もかけた研究がパーになる。・・・そうか。これは夢だ。だからこんなあり得ないことが起こるんだ。」


「いや、そこまであり得なくないよ。」


「黙れ!もういい!・・・終わらしてやる!時間を稼げΣ!」


Σはゼラハの前に立ち炎弾を放つ。レアンは槍で先程のように弾く。コールは炎弾を避けながらレアンの後ろに逃げる。少し炎弾が肌を掠めたようだ。コールの頬には軽い火傷がある。


「アチッ!」


「厄介だね。特にあのΣは硬いから倒しきる間に誰かがやられそう。」


「倒せる前提かよ!でも、確かに動けないダーノさんがいるのは厳しいな。」


「すまなかったな。動けなくて。」


シーノは直ぐ様父親のフォローへ


「父さんは悪くないよ。コールが酷いだけ。」


「俺かよ。別に悪いとは────」


突如、天井を覆い尽くすほどの大きな魔方陣が出来る。とてつもない魔力がレアンたちを襲う。


「何これ?肌が・・・痺れる。」


シーノの顔に焦りが出てくる。コールは顔がひきつっている。


「おいおい、あの魔力は洒落にならないぞ。流石にシルバーアイスって、異名は伊達じゃあないってか。」


ゼラハの顔は自信に溢れた顔・・・ではなく自暴自棄になったように狂い笑っている顔だった。


「お前たちはここで終わる。俺の研究を台無しにしたお前らは命でその対価を支払うがいい。」


なおもゼラハが放つ魔力は上がる。


「これはまずいね。こんなところで[代償魔法]を放たれたら。」


「代償魔法?」


「術者が何かを犠牲にすることで普通の何倍もの威力になると言われている魔法だよ。正直こんな周りに壁があるところで放たれると弾けても壁に当たって結局みんな仲良く死ねるね。」


「弾けるんだ。」


「だったらどうすんだ?レアン。」


「[封印]か、それとも[解放]するか。」


「どちらもダメだ。ギリギリまで使うな。他の手は?」


レアンとコールしか分からないやり取りの中の二つの言葉にシーノは興味を引かれた。しかし、訊くことはなかった。


「じゃあ、ギフトのリミット外す?」


「うーん。・・・まぁ、しょうがないか。」


「リミット?」


(ギフトにリミットなどはないはず。そもそもギフトは突如出現した代物。改造するどころか、少しの小細工すら未だに国ですら成功していない。だからこそ[神から贈られたもの]という意味を込めてギフトと呼ばれているのだから。)


コールはΣの攻撃を止めるため煙玉を取り出し、投げつける。煙がΣを囲みこちらへの攻撃が当たらなくなった。


「行くよ。」


彼はギフトをもとの姿にである剣に戻し両手の上に置く。暫くすると剣が虹色の光を放つ。光が小さくなり剣の代わりに丸い宝石があった。そして、あろうことか口の中へ放り込んだ。その瞬間、レアンから先程の光と同じ色のオーラが彼を覆った。その時に発生した風により煙が晴れる。シーノは思った言葉が口に出た


「キレイ。」


「ああ、何て美しい。」


ダーノも娘と同じように思った言葉が出ていた。


「また、訳のわからぬ技を!だが、そんなものこの魔法でお前ごと消し去ってやる!」


ゼラハの魔方陣から溢れた魔力の影響で魔方陣の下の地面には氷が出現し始めた。

レアンはゼラハの魔法を止めるために駆け出した。Σは攻撃対象を再認識し攻撃を再開した。

しかし、レアンに当たった攻撃はもはや彼に触れるだけで消えた。それどころか地面にできた氷は触れた瞬間に砕ける。


レアンはスピードを上げ、そのままΣに突っ込んだ。Σは踏ん張ろうとするも、スピードは落ちることなく押される。それでも止めようと力を入れようとすると、甲羅にヒビが入り最後にはΣはレアンに貫かれた。人一人分の風穴が空いたΣは震えながら立ち尽くしていたが、すぐに糸が切れたように崩れ落ちた。

ゼラハは向かってくるレアンに恐怖していた。そして、Σを貫いて出てきたレアンを見てその恐怖は


「私に近づくなーーー!」


完成しきっていない魔法を放つという行動に繋がった。

しかし、その威力は相当なもので魔方陣の中からとてつもない吹雪が出てくる。

あの吹雪の中で息をすれば肺が氷ってしまうだろう。吹雪でレアンの姿が見えなくなる。


「・・・やった。やったぞ!あの化け物を倒した。・・・グフッ」


ゼラハは吹雪の間近まで近づき興奮しながら雄叫びのようなものを上げている。しかし、魔法の副作用かフラついている。

今回は体の一部を犠牲として放った一撃であった。そのため体の中のどこかが空洞になっているような激痛がゼラハを襲った。口からは血が流れており、放っておけば死に至るだろう。


「体のどこかが持っていかれたか…。まぁ、替えの臓器なら第二研究所にあるだろう。ここの研究も潰れたがまたやり直せばいい。あいつの死体はきっといいサンプルになるだろうから元は取れるはず。他のやつらも───」


勝利の余韻に浸っていたゼラハの言葉が途切れた。吹雪の中からオーラを纏った手がゼラハの胸ぐらを掴んだからである。その手がゼラハを持ち上げる。


「ヒッ、」


ゼラハから情けない声が漏れた。そして吹雪の中から出てきたレアンと目が合う。ゼラハにはレアンの後ろにとてつもない化け物が見えた。


「お前が弄んだ命たちから、あの世で復讐されていることを願うよ。特にあの四人から。」


怒りが滲み出ている声は彼から話す気力すら奪った。レアンはゼラハを離す。

彼の両手にオーラが集まっていきブレードの形になる。そして、落ちていくゼラハの右手を切る。次に左手、右足・左足・と、次に胴体を数ミリ単位で切り刻む。切る度に切断面から赤黒い血がレアンを降り注ぐ。しかし、レアンは止めない。切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る。痛みに断末魔を上げる暇もなく肉片と化したゼラハが地面に落ちたときにはコールたちの方へ歩いていた。その時のレアンの顔は疲れたというようにあからさまに目が垂れていた。

コールはレアンに労いの言葉をかける。


「レアン、お疲れ。」


「うん。まずは、ここから出て病院いこうか。」


そう言うとレアンが纏っていたオーラのようなものが眩い光を放ちすぐにシャボン玉か弾けるように光が散り、元の剣に戻った。それを掴み鞘に入れた。


「いや、私のために行こうとしているのなら大丈夫だ。ほとんど怪我は打撲などだ。骨も折れてはない。病院の世話になるほどではない。」


「ダメだよ。一応行っとかなくちゃ。」


「そうですよ。俺も病院に行った方がいいと思います。」


「いや、しかし・・・・。」


「いや、行っといてください。ゼラハに体を弄られているかもしれませんから。後々体から異常が・・・。」


レアンの言葉に全員が凍りついた。


「今すぐ病院に連れていってくれ!」


「わかってますよ!」


「近くの病院何処だっけ!?」


レアン以外がバタバタし始める。割りと元気がまだあることにレアンは安心した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ