ゼラハ邸
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家の外観は大理石で作った白い家でまさに貴族といったところだ。外にある柱に関しては何処かの神殿であった、ドリア式とか言われているデザインだった。庭には高級車が何台もある車庫が隅に。真ん中には噴水が。手入れされた花が一層美しく庭に設置されている。レアンたちは今屋敷のレンガの塀の外にいる。
「で、着いたけど、どうするの?わざわざ[貴方は父さんを拉致しましたか]って聞くの?ボク、今あいつの顔見たら殴ると思うよ。」
シーノは怒気をはらんだ無表情な顔をしている。コールは引き吊った顔でシーノを落ち着かせようとする。
「いやいや、そんなバカな真似はしないよ。ただ普通に町の人から調査しても時間がかかるから、内緒で屋敷にお邪魔するんだよ。この我が家のアイドルことレアン君が~!」
「アイドルです。頑張りま~す。」
シーノはおかしくてプッと少し吹いてしまった。シーノの顔から怒りの感情が消えたように感じた。
「アイドルかどうかはともかく内緒で屋敷にお邪魔って、不法侵入するってことだよね?こんな警備が固いのにどうやって?」
シーノの言い分は正しかった。警備は門に3人、敷地には7人、屋敷の扉の前に4人、屋敷の中にはもっといるだろう。
「居るだろうけど。まぁ、そこはレアンが何とかするよ。」
レアンは頭を縦に何回もふった。
「今回の目的はダーノさんの救出。ここにいるかはまだ分からないから居ない場合は、最低でも居場所を突き止めてくること。」
「どうやって?」
レアンはコールに聞いた。コールもそんなことを聞かれるとは思ってなかったのかビックリした顔をしている。
「そりゃ、話盗み聞きするとか居場所書いた紙とかあるだろ。」
「なかったら?どの辺りが撤退の基準?」
「ん~~・・・。見つかりそうになったらでいいよ。そこら辺はお前に任せる。見つけたら即帰ってこい位だな。そしてー!余裕があれば金目なもの取ってこい。あと、もしバレて逃げるとき、バラバラに別れて逃げるからこの国の端っこの森林公園に集合な。」
「ラジャー。」
「だから、どうやって侵入するの?」
「まぁ、見ててよ。」
そう言いながらレアンは準備運動をし始め、終えてから軽く地面を踏みしめたあと軽く地面を蹴った。
すると、レアンは塀よりも高くジャンプしたあと、そのまま塀の上に膝もつかずに着地した。しかし、そのジャンプ力は常人と比較してより余りにも高かった。塀の高さは5メートル、シーノは口をただポカンと開けている。喋り出すまでに間があった。
「レアンの体ってどうなってるの?普通にあんなの人間に出来ることではないよ。ギフトも使ってないみたいだし。」
コールに疑問を投げ掛けたシーノは訝しむ様に軽々と塀を登ったレアンを見ていた。
「俺から言えることはねーよ。気になるなら後で自分で聞けよ。」
コールは教えようとはしなかった。しかし、それには理由があるというのはコールの雰囲気からシーノは読み取った。
レアンは侵入するところを探すためキョロキョロしている。
「行ってきま~す。」
とこちらに聞こえるギリギリの声で言う。
屋敷の空いてある窓を探し見つけると共に敷地の中に入っていった。入ったところですぐにある薔薇の茂みに隠れた。なにも考えず入ったので案の定棘が身体中に刺さる。
(イタイ、イタイ、イタイ。)
声を我慢しながら茨の茂みを一気に進み屋敷に近づいた。レアンの目が潤んでいた。
「ミスっちった。」
と舌を出しながら独り言をいう。屋敷の前の四人が喋っていた。まずスキンヘッドの男が
「当主の頭のいかれ具合にも嫌気がさすぜ。」
と嫌そうな顔でいう。そのあとにサングラスの男が
「おい、雇い主の悪口を仕事中に言うな。それでもプロか?」
と怒りながらスキンヘッドの男を叱る。それにスキンヘッドの男が反論する。
「俺らも真っ当な仕事してないし、犯罪の片棒も担ぐこともあるが...。
それでも、あいつのやってることは度が超えてるぜ。あの有名なダーノ・シュバルツ誘拐にしてもそうだ。しかも、あいつ───」
「黙れってつってるだろ!」
とうとう喧嘩になりスキンとグラサンが喧嘩を始めた。残りの二人はそれを止めるので必死になっている。レアンはこのチャンスに気づかれないように脇道を行き屋敷の裏手に回った。
そして、屋敷の三階の窓が空いているところまでたどり着いた。一旦辺りを見回して警備が居ないか確かめる。誰も居ないことを確認すると空いた窓まで飛び上がり、その縁に手をかけてぶら下がる。
そこから腕の反動を使って体を持ち上げ顔だけを窓から覗きこむ。
中はとても綺麗でレアンはこんなきれいなところを見たことはなかった。ツルツルの大理石で出来た壁。地面には赤い絨毯。壁には幻想的な絵画が掛かっている。それを見たレアンの感想は
(高級ホテルみたい・・・。)
まぁ、合っていた。人の気配はなく、一旦中に入る。これから証拠探しするべきなのだが、彼は重大なことに気づいてしまった。それは優先事項の上位へと移るほどである。
そう、それは自分が腹をすかせていること!
しかし、自分には重大な任務がある。
彼は心の中で2択を迫られている。食べ物を探すか?それとも任務を優先するか?
「う~ん」と唸っている。彼は今、自分の中の天使と悪魔が絶賛戦闘中である。
「今は任務中だよ。終わったら食べられるんだから我慢して!」
「でも、腹が減っては戦はできぬっていうぞ。」
そして、この戦いは現実のレアンが食べ物の臭いを嗅いでしまったことで一気に勝負がつくのであった。
「ゴーハーン♪」
天使は悪魔のボディーブローで沈んだ。
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「ここって厨房?」
レアンは厨房に来た。勿論気付かれないように。しかし厨房には専属のシェフがいた。
「さて、ここからどうするか・・・」
まさかのここで集中モードである。しかしそんなことを咎めるものもツッコミをいれるものも居ない。そう、彼は今目的よりも自分の欲望のために動いているのである。
そして、レアンは食料を取りに行った。まず、厨房にある調理器具を地面に落とす。シェフはビックリした。そして、落とした調理器具の方へ歩みだした。
「落ちるような場所には置いてなかったんだけどな~?」
その言葉をいう前にレアンはすでに食料の方へ。そして、調理されていない方の食料を幾つかばれない程度(と言っても食料は山のように積んでいたので相当な量を抱えて。)を持ってそのまま別のドアから厨房の外へ。
「任務完了。これより帰投する。」
そう小さい声で呟きながらレアンは誰も居ない部屋を探し廊下を歩いていった。
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「仕事しろよ!」
と屋敷の外のベンチに座っているコールは急に言い出した。隣に座っていたシーノは驚いた顔で
「どうしたの?急にツッコミなんてして。」
「・・・分からん。でもなんかツッコミをしなければならない気がした。そう、まるで使命のような・・・。」
「それにしても遅いね。何かあったのかな?」
「屋敷内が騒がしくないんだから、まだ大丈夫なはずだろ。」
「父さん。この屋敷にいるかな?」
「さぁな。まっ、そこはレアンが調べてるだろ。今頃、ダーノさんかその居場所位は突き止めてるんじゃないか?」
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「あっ、ダーノさんのこと忘れてた。」
誰もいないと確認した部屋で食料を食べきったレアンはやっと元の目的を思い出した。部屋の中に隠れていたレアンは外に出てまた証拠探しに出てみた。
現在は三階の廊下。廊下を歩いていると、階段が見えた。下の階を見るため階段まで進む。
二階では巡回している人が現在進行形で増えているのが、階段の中間地点にある鏡で見える。どうやらどこかで休憩していた人達も任務に戻りだしてきたようだ。
「厄介だな・・・。急がないと。」
そう言うと共に、廊下の曲がり角から人の影が見えた。レアンはすぐに来た道を戻り壁に背をつけ覗いてみる。出てきた人は警備のものではなくメイドだった。書類のようなものなどの紙の束を運んでいるようだ。もしかしたらあそこの中に証拠となる物があるかもしれない。レアンは後をつけることにした。しかし、メイドの行き先は二階のようだ。
「どうやってついていこうか?下には警備いるし・・・。」
しばらくしてレアンは答えを出した。
「よし。気絶させていこう。最終気絶させた人は放置して・・・。」
とそのあとはブツブツ言いながらつけていった。
後をつけていると廊下を徘徊していた傭兵がメイドに話しかけた。レアンは階段の中間で待機していた。話終わるとメイドはそのまま直進。傭兵は来た道を逆に戻っていった。レアンは階段を降りて傭兵の進んだ道の方を覗いてみる。傭兵は振り返る様子もなく、こちらを見ているものは誰もいない。レアンはそのままメイドを追いかけた。メイドが廊下の角に差し掛かるとレアンから見えない方へお辞儀をした。
誰かいるのだろうと一番メイドに近い所のドアまで足音をたてず行き部屋の中に隠れた。しばらく隠れていると足音が近づいてきた。そして、ドアの隙間から傭兵の足が見える所まで来た。ギリギリといったとこだろう。
・・・足跡が遠ざかっていくのを確認し、レアンはドアを少し開けて覗く。・・・どうやら行ったようだ。
レアンは外に出てメイドの行った方へ少し急いで歩いた。壁から顔を出してみる。探してみるがメイドはどこにもいなかった。すると、先程とは別の階段からメイドが上がってきた。書類などの紙束はもう持ってない。
(下の階の何処かに置いてきたのか?)
メイドの姿が消えるのを確認するとともにレアンは階段に向かった。幸い敵は見えないところを徘徊していて楽に行けた。階段を降りていくと普通の階段とは違うことがわかった。何故なら三階から二階へ向かう階段より遥かに長かったからである。
(一階じゃなくて、そのまま地下にでも続いてるのかな?)
階段を下りていくとギリギリフロアが見える位置で止まった。地下は、二階や三階とは明らかにフロアの構造が違った。道は一直線のみで廊下の壁にはドアが一つもない。
そのかわり、奥には普通より派手な扉があった。宝石を装飾として散りばめられている金で出来た扉である。
(派手なデザインだな~。あっ、扉の前に二人いる。)
扉の前には屈強な兵士が二人もいた。二人ともゴツイ黒い鎧に全身を包み先端の刃以外が木で出来た槍を持っている。よく観察するが、やはりこの階は他の普通の階と違って扉までは一本道だけだった。流石に見つからないで扉を通るのは無理そうである。レアンはゆっくり息を吐き集中し始める。
(押しとおるしかないか・・・。)
レアンはここでポケットから砂の入った瓶とスライムの液体とラベルの書いた瓶をとりだした。砂の瓶を開け円を作り、そこに一滴ネバネバした液体もう一つの瓶からたらし呪文を唱えた。
「我、空気を遮るものなり。故に我、何者にも聞こえぬ境界を作るなり。」
すると円から半透明な膜が出てきた。
この呪文は「サウンドアウト」という呪文で膜が張られた境界からは空気が振動せずお互いの場所から音が聞こえなくなる呪文である。これでこちらが騒いでも上の階にはバレない。その代わり上の階から来る人の足音は聴こえなくなる。つまり、早く終わらせなければ厄介なことになるのである。
レアンは階段から扉へ走り出した。
「ん?なっ、何者だ!?止まれ!」
二人の兵士は槍を構えた。レアンが止まらないのを見ると兵士の一人がレアンの方に向かっていった。槍の届く距離まで来ると兵士は槍をレアンを串刺しにせんとばかりに突いてきた。しかし、レアンはそれを避けると共に槍の中間を肘で挟むと、ここで一回転。槍がバキッ、という音と同時に折れてしまった。
「なっ、───」
そのあとの言葉はレアンの蹴りが兵士の兜を凹ますとともに途切れた。一人目の兵士が倒れる頃には既に二人目へと向かって、レアンは走り出していた。
二人目の兵士が動揺しながらも突進してきた。その兵士も倒された兵士と同様に槍で突いた。またレアンは横に避けながら肘で挟み、回転しようとする。しかし、兵士は槍を放し左の腰につけた刀に手を伸ばそうとしている。
(動揺していても相手はプロ。応用がきくな。)
レアンは回転をやめず、そのまま槍の刃とは逆の部分で刀をとろうとする右手を回転の勢いを乗せて叩く。兵士の右手は掴もうとした刀にぶつけながら払われる。レアンの持つ槍の方も槍の刃の部分が壁にぶつかり、折れてしまう。
レアンは気にも留めずただの棒になった槍でそのまま顎を下から突き上げるように槍を放つ。兵士は地面に背中を向ける体制でふっ飛び地面と平行の状態で浮いた瞬間、レアンの踵落としで兵士は頭を地面とレアンの踵と挟る状態で倒れた。踵を上げると兵士の兜から血が溢れるように隙間やひびの入ったところから漏れだした。
すぐさまドアの後ろに隠れる。するとすぐに
「何事だー!」
と赤い鎧の兵士が出てくる。そして目の前にある光景を見て
「だ、誰───」
(この赤鎧、兵士団長かな?)
何てことを考えながら赤鎧の足を後ろから蹴り転倒させる。赤鎧は言葉を言い切る前に地面に倒れる。そして、何か言おうとしている赤鎧の顔めがけて蹴りを浴びせた。
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「・・・。」
今はもう深夜と言っていい時間だろう。シーノはベンチに座りながら屋敷を眺めていた。コールはトイレに行くと言って今は居ない。シーノはペンダントを握る。そして、
「・・・父さん・・・。っ、グスッ。」
泣き出した。今までは気丈にそして冷静に振る舞っていたが、コールたちが居なくなったことから気持ちが緩んだのだ。しかし、レアンに会うまでは泣く余裕すらなかった。そう、彼女は父親が消えて切羽詰まった状態からようやく泣くことが出来たのだ。
少し離れたもう閉まっている雑貨店の前に背中を着けたコールはスープを二つ持ったままいた。コールはここで屋敷に行く前のレアンを思い出した。
~~屋敷潜入直前~~
「コール。話があるんだ。」
「んっ、どうした?レアン。」
「俺が屋敷に行ってから遅いようだったら、シーノを暫く一人にしてあげてほしいんだ。」
「・・・それはまたどうして?」
「シーノはお父さんがいなくなってからだいぶ犯人のこと調べてたはず。必死過ぎるくらいに。なんて言うか・・・クールすぎるっていうか。」
「クールなのは元々なんじゃないか?」
「まあ、勘違いなら別に違ったらいいんだ。それでも、ちょっとしたガス抜きになるくらいにはなると思うから。コール、頼んだよ。」
~~今~~
(お前はすごい奴だよ。レアン。)
そんなことを考えていると啜り泣きが止んでいた。
(すぐに行ったら近くにいたのがバレるかもしれないなぁ。スープを冷めてしまわないうちは大丈夫だろう。)
コールはもうしばらくシーノを一人にしてあげることにした。スープからはまだ湯気が出ていた。
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レアンはしばらく廊下で待機し、まだ部屋に誰かいないか調べた。誰も出てこないことで、もう兵士は居ないと判断し、部屋の中に入ってみる。部屋の中は壁に色々な絵にゼラハ・クラストフ自身の自画像・写真などがあった。机には花などと、ともに小さいゼラハの彫刻があるときは流石のレアンも
(あーーー・・・。キモいな!)
彫刻のある机の横に紙の束が見えた。何かの資料や誰か宛の手紙がある。さっきのメイドが置いたのだろう。紙の束を手に取る。大体が生物研究の資料のようだ。その中にあるのは貴族たちの返信の手紙。何かのイベントに招待したようだ。返事の手紙には自画像観賞会の参加の有無。大体の人が不参加の返信である。
(まぁ、行かないよね。)
レアンは哀れむような目をして違う手紙に目を通した。
一通り目を通したが、その中にはダーノ・シュバルツに関する物はなかった。
レアンは辺りを見渡してみた。
正直なんとなくで理由もなかったが。ふと、部屋に飾ってある絵の中に一つだけ自画像ではない絵があった。女神が地に落ちていく絵が書かれている。何となく絵に触れてみる。
すると、レアンは違和感を感じた。絵を叩いてみる。他の絵も叩いてみる。しかし、この絵だけ他のとは違う音がした。多少この絵以外は叩くとき力加減が、何故か余計に強かったがそれでも違いは明らかだった。絵を外してみる。すると、金庫がはあった。レアンはピッキング・・・ではなく素手でこじ開けた。
中には大事そうな箱がいくつもあった。一つ開けると中には宝石の類いがたくさんあった。他の箱も開けていく。そして、一番奥の箱に手紙と地図が入っていた。まずは手紙を見てみる。
[ゼラハ様、予定通りダーノ・シュバルツは研究所からの帰りに第三アジトに拉致しました。娘も拉致したら例の情報についても吐くと思います。近々アジトに顔を見せてはいかかですか? 第三所長アガルより。]
(第三アジトってどこ?)
何て思っていたが問題はすぐに解決した。一緒に入っていた地図にチェックと名前が書いていたのだ。当然、第三アジトの場所も書いていた。
(なんというか、やっぱり馬鹿なのかな。)
レアンは悟りを開いたような目をしながらポケットに地図を入れた。目的を達成したので帰ろうとしたがここで屋敷に行く前のコールの言葉を思い出した。
(余裕があれば金目なもの取ってこい!・・・金目なもの取ってこい!・・・取ってこい!)
レアンは金庫を見た。そして、しばらく目をつぶり考え始めた。そしてレアンはカッ、と目を開き動きだした。
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「遅いね。」
「遅いな。」
コールとシーノはベンチに座りながらスープを飲んでいた。少し冷めていたが別に不味いわけではない。
「心配。見つかったのかな?」
「いや、それだったら俺は屋敷の人が心配です。」
「あっ・・・、成る程。なんとなくわかった。」
シーノは昼のレアンとの出会い[事件]を思いだした。
「でも、屋敷がまだ騒がしくないってことは見つかってはいないね。」
「そうだな。だけど寒いからなー、外。そろそろ帰ってきてほしいんだけど・・・。」
その時、レアンが入っていった窓が開いた。コールとシーノはベンチから立ち上がり、窓を見た。案の定レアンが顔を出した。が、何故か出てこない。というか何か引っ掛かっているように出ようとしても出ない。すると、スポッと音がするような感じで抜けた。そして、そのまま地面に・・・。
「★※◆□◎●↓↑」
シーノとコールは声にならない声で騒いでしまった。しかし、なんとか窓の淵か引っかかり足を掛けたのか、落ちることはなかった。
その姿を見て何とか二人は落ち着きを取り戻した。コールとシーノは改めてレアンを見た。が、見えない。何か白い袋のせいで髪の毛と足しか見えない。
「何だろう?あの大きい袋。...まさか父さんが中に!?」
「レアンはそこまでアホじゃねーよ!だがあんな袋あってよく見つかんなかったな~。」
「あっ、こっち向いた。」
レアンは体勢を変えてあたりを見回した。そして、こちらに気づいたレアンはコールとシーノを見つけると手を振り出しまさかの
「ただいま~~。」
叫んだ。それはもうよく聞こえるいい声でした。何故屋敷ではあれだけ警戒しながら見つからないようにして来たのに。そして、バレてもいなかったのに。外に出たら声をださなきゃならないなんてルールでもあったのだろうか?もしかしてわざとなのか?そしてその袋の中身はなんだ?そんなことを考えながらコールとシーノは脱兎のごとく逃げ出した。まるで私たちは無関係ですとでも言うように。
「あれっ、どうしたの~?」
なにもわかってないレアンはまたも大きな声で叫んだ。コールたちからの返事はない。代わりに来たのは
「貴様!?何者だ!」
「侵入者だ!殺せ!」
屋敷にいる傭兵・兵士たちなどの声だった。
シーノとコールはそのまま宿まで走り部屋に入り眠りについた。
(どうせ彼は大丈夫。どうせ彼は大丈夫。)という自己暗示をしながら眠る少女。
(やっぱり、あいつのことはわかる日なんてこない。)なんて見限るように呆れながらやけくそで眠ろうとする男。
双方眠りにつくのに時間はかからなかった。仲間が一人おいてけぼりのはずなのに。