集合
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「あっ、コールのこと忘れてた。」
時間も忘れるくらい話している途中、レアンが急に立ち上がった。
「えっ、コールってギフトのこと口止めしてた人だったっけ?」
「うん。約束してたんだった。」
「カウンターで待ってろって言われてたんだ。」
「カウンターって?というより、一人じゃなかったの?」
「うん。コールと一緒にこの国に来たんだ。それでGun&alcohol っていう───。」
言いきる前にシーノは思い出した。
「あー、さっきボクがもめてた前の店だっけ?」
「うん。そこで待ち合わせしてたんだ。たしか、ここの店着いたくらいの時間に。」
「それって、だいぶ前の時間だよね?大丈夫な───」
今度はシーノが言葉をいう前に他の声で遮られた。レアンではなかった。それは噂されてた
「見つけたーーー!!」
「あっ、コール!見つけた~。」
「見つけたのは俺だよ・・・。あー、しんどっ。」
コールは疲れたようにレアンの隣の席に座った。
「頼むからいうこと聞いてくれよ。お父さんは心配です!」
なんて愚痴っている。おどけて言っているところから、怒っているわけではなさそうなのでレアンも少し安心したような顔しながら
「ゴメンね。もう破んないよ。っていうか、コールはお父さんというよりお兄ちゃんだよ?」
なんて返しをする。
「そうか~。俺はまだそんな若く見えるか~。まっ、まだ俺26だが・・・。っていうか、その黒髪の娘・・・。」
「今気づいたの~?この娘はシーノ。助けたの。」
「どゆこと!?何から!?」
完全に茅の外になっていたシーノは、さっきまで楽しく話していたのにとちょっと残念そうな顔をしながらコールに説明した。
・・・五分後・・・
「うん。まぁ、事情はわかった。わかったが、レアン君。チミは俺との約束を忘れるのが早すぎないかい?」
「僕を信用したコールが悪いんじゃない?」
「そーかー。俺が悪かったのか~。ってことにはなんねーよ!」
「えーー。」
「あ、あのっ、」
ここで、シーノが話を止めた。
「・・・何かなお嬢さん?」
「コールなんか今の言い方キモい。」
「なんですと!?」
「で、何かな?」
「もしもし、無視ですか?」
「実は・・・」
「おーい。」
「助けてほしいんだ。」
コールはおどけた態度をやめた。
「助けたよ?」
「レアン、そーゆーのもう要らんぞ 。で、具体的には?」
「えっ、助けてくれるの?まだ会ったばかりなのに?」
「レアンが世話になったしな。しかも、あんたはダーノさんの娘だ。助けないわけにはいかない。」
「父さんを知ってるの!?」
「知ってる。俺の恩師だ。今回この国に来たのはダーノさんが話があるってことで来たんだ。俺たちが出した種族別進化論でまた、分かったことがあるって話だったんだ。君のこともダーノさんから聞いていたよ。写真も見してもらったからな。」
「恩師って、じゃあ、コールってあのコール・サンペル?もっと老けてると思ってた。父さんもあなたのこと友人って言ってたから。ん?
俺たちが出したって父さんは種族別進化論にそんなに関わってないよね?」
「いや、ダーノさんじゃなくてレアンの方だよ。っていうか出したのは俺だけどだいたい調べたのはこいつの方だよ。俺はただテーマを決めただけ。」
「じゃあ、なんでコールの名前出てるの?」
「レアンには書くだけの文章力が無かったんだよ。」
「あー、成る程・・・。」
「・・・なんでこっち見てるの?」
シーノとコールはレアンに温かい眼差しを送った。
「まぁ、この話はもういいだろ。シーノ、ダーノさんに何があった?」
「分からない。でも、5日前に急に帰ってこなくなって・・・。多分、研究室から帰ってる途中に連れ去られたんだと思う。ボク、どうしたらいいかわかんなくて・・・。でも、父さんの友人が来るって聞いてたから、その人に助けてもらおうと。レアンは会ったばかりだったけど、優しかったし強いからこの人なら助けてくれると思って頼もうと思ってた。まさか、丁度父さんの言ってた友人とこんな形で会うとは思ってなかったけど。」
「そうか・・・。まぁ、知らん人はあんま信用するなよ。無用心だぞ。レアンだったから良かったものの。」
「うん。でもレアンは何故か信用できる人だと思ったんだよ。」
「あー、わかった。何か嘘つかなそうだもんな。いや、嘘つけなさそうだよな♪」
「うん。嘘はついちゃいけないもんね。」
(バカにされてるとも思わんもんな・・・)
コールはレアンをあわれむ目で見てた。
「わかった。恩師のためにも、シーノ。お前を助けるよ。で、具体的には何をするんだ?助けるにしても何か手がかりはないのか?」
「証拠とかは無いんだけど、怪しい人はいる。父さんのところを必要以上に訪ねてた人がいるの。その人が来てから父さんはあまり外に出なくなってたから。」
「その人について知ってることは?どこまで調べた?」
さっきから喋らなかったレアンが急に話し出した。また、幼さが消えている。
「う、うん。名前はゼラハ・クラストフっていう貴族。シルバーアイスって異名もあるくらい氷魔法が得意って言われてる。家はこの町の真ん中にあるアルノサレス塔から南東に行って貴族が集まっている住宅街の一番大きいお屋敷に住んでる。仕事としてなんか生物に関する研究とかしてるみたい。」
「研究ねー。コール、どう思う?」
「怪しいな。研究にしても歴史関係とは少ししか・・・。いや、俺たちの種族別進化論は多少関係あるな。今回呼ばれたのも論文についてだったからな。案外当たりかも。」
「じゃあ、行こうか。」
そう言うとレアンは席を立った。
「何処に?」
シーノは聞いた。
「お屋敷に決まってるじゃん。」
シーノは驚いたような顔を、コールはあきれた顔で笑っているレアンを見ていた。