表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リダンツ!〜霊魂離脱と異世界転移〜  作者: りれいか
序章
14/21

第14話 オルニクス騎士団

オリバーさんの行方が分からなくなってから数日が経った。


初めの一日はロロも部屋の前に運んだ料理に手を付け無かったが、二日目になると浮かない表情のまま食器を下げに一階まで降りてきた。



「…ありがとう。」



少し照れた様子でお礼をしたロロ。

その目の下には隈が浮かんで、綺麗に整えていた赤髪も乱れていた。



「いや、いいんだ。それよりもう出てきても大丈夫なのか?」



ロロから空いた食器を受け取り、そのまま洗い場まで運ぶ。

口に合っただろうか、味見をした時はそれなりだったけれど。

友人もいない一人暮らしの学生だった俺は、暇な時はよく自炊にチャレンジしていたので人並みには料理が出来る。

というか、暇を持て余して無駄に凝りすぎたモノばかり作っていたので応用が効く。

まぁ、調味料がハーブだけだったのでかなり苦戦したが…。



「ごめんなさい…、まだ少し気分が悪いの。もう少し、あと少しだけしたらきっと整理が付くから…。」



そう言うと、弱々しく笑って踵を返した。

その痛々しい背中を見て思わず肩に腕を伸ばしかけたが、手は弧を描いて空を切るだけだった。

俺に彼女を慰める資格なんて無い。

それが出来る人の仇を前に、何もできなかった俺には————

———

——




「はぁ…。」

『仕方がないよ、君は悪くない。』



数日前の出来事を思い返して溜め息を吐いてしまった。

それからロロは部屋に篭ったままだ。

俺の作る料理は食べてくれているし、水浴びをしに出掛ける時もあるようだが、顔を合わせたのはあの一度きりだ。

もちろん、彼女が立ち直るまで面倒を見るつもりだが、ずっとこのまま立ち止まっている訳にもいかないだろう。

いずれ彼女を連れて旅に出る事になるかもしれない、その時に少しでも役に立つよう今の内に鍛えておかなくては。


そう考え、早朝の湖の周りを走り込んで体力作りに励んでいた時だった。



『真人、誰か人が来るよ。』

「はぁ、っ、あ?なんだって…?」

『大勢の人だ。すぐ近くまで来ている。」



人…?

オリバーさんの家に来てから来客はおろか、人間の姿を他に見た事が無かった。

一番近い村からもかなり距離があるハズだし、大きな湖があるだけのこんな辺鄙な場所に、わざわざ足を運ぶ人はいないと思っていた。

それに、大勢というのも気になるな…。


ランニングを中止し、辺りを警戒しつつ木陰に隠れて聞き耳を立てる。

すると、早朝の静寂に包まれた湖に似つかわしく無い音が響く。


ザッ、ザッ、ザッ


聞こえた。重なり合う人間の足音が確かに。

金属の擦り合わさる音や、蹄鉄が地を踏み鳴らす音も同時に聞こえてきた。


その間も無く、少し離れた場所からその集団が姿を現すのを俺は捉えた。


—総勢50名程の軍勢、いや、討伐隊か何かだろうか。

それは、青と白を基調とする鎧を身に纏い武装する集団。

まるでゲームに登場する、王国の騎士団といった様な…



「な、何なんだよあいつら…。」



首元のアミュレットへと問いかける。



『わからない。けれど、君の予想は大凡正しいかもしれないよ。ほら、」



クロの言葉で再び鎧の集団へ水を向けると、その中の一人が旗を掲げているのが目に入った。

その旗に描かれているのは、鎧と同じく青と白で基調され、龍の陰影を背景に剣と盾が描かれたエンブレム。


—それは、首都ヴォイニルに栄えるリテマニア王国のエンブレムだった


以前クロが読んでいた本に同じ絵が描かれていたので間違いないだろう。

そのまま息を潜めて動向を探っていると、そいつらはロロのいるオリバーさんの家へと向かっているようだった。

明確な敵意こそ感じないが、不穏な空気が満ちている。

仕方ない…、王国の騎士団ならすぐに襲いかかって来るような事もないだろう。


意を決して連中の目の前へと飛び出す。



「誰だ!?」



そのうちの数人が俺の姿を確認するや否や、武器を構えた。

よく訓練されているようで、統率の取れた素早い動きだった。



「ま、まてまて、俺は怪しい者じゃない!」

「嘘を言うな!それなら何故突然茂みから現れた!!」



うぐっ、まぁ確かにいきなり茂みから現れたらそりゃ警戒するよな…。

ポケットなモンスターじゃあるまいし。


冷や汗を流しつつ、何とか警戒を解けないかと考えていると、その中でも一際立派な装飾の施された鎧を纏う人間がそれを制した。



「武器を下ろせ、彼は一般人だ。」



その命令に恭しく首を垂れて、俺に武器を構えていた数人が下がる。

その部隊長然とした態度の人は、女性だった。

透き通る程美しい金髪を肩口で揃え、表情は凛々しく口を固く結んでいる。

西洋の映画の中に迷い込んでしまったのでは無いかと錯覚する程整った顔立ちで、しばらく茫然と眺めてしまった。



「——い、おい、聞いているのか?」

「ひ、ひゃい!」



上擦った俺の声が辺りに響く。

やってしまった…、コミュ障の俺には少々刺激が強すぎたようだ。

その頓狂な反応に、後ろで整列している数人が笑いを堪えているのか、肩が震えているように見えた。

電車の中で寝言を言いながら起きた時の感覚に似ていて酷く恥ずかしい…。

ちくしょう、覚えていろよ!

心の中で当ての無い悪態を吐いたところで、金髪の美しい女性に向き直る。



「それで、お前は何故こんな所にいる。」



若干呆れたような声音でその女騎士は尋ねてきた。



「…今、向こうにある家に厄介になっていて、散歩していたら足音が聞こえたので隠れて様子を伺っていました。」



そう素直に言って、俺は主不在のオリバーさん宅を指差しながら答えた。



「…ふむ、あの家は廃屋だったと思うんだが。本当に向こうに見える家で間違い無いのか?」

「は、はぁ。間違いないですけど…。」



どういう事だろう?

遠目からも廃屋には見えないと思うんだけどなぁ…。



「まぁ、いい。私はリテマニア王国に仕えるクレーネ・フォル・シルロスと言う。オルニクス第一騎士団の団長を務めている。君の名前は?」



やはり騎士団だったか。

元いた世界で蓄えたゲーム知識が役に立ったな。

それにしても、この世界の騎士制度はよく知らないけれど、女性で団長に就いているとは相当強いんじゃないだろうか。



「俺は秋原 真人っていいます。それで、あの家に何か用ですか?」

「アキハラ、マサト…か。変わった名前だな。

いや、特にあの家に用があった訳ではないんだが…。」



まぁ名前に違和感を持たれるのはお約束ですよね。

最後の方で濁すような言い回しをしているが、オリバーさんの家に用が無いとすると何が目的なんだろうか?



「詳しくは話せないのだが…、この辺りで少し問題があったという報告を受けて、その調査に来たのだ。何か心当たりは無いだろうか?」



調査に第一騎士団様がねぇ…。

疑いの余地無く、魔王の件で間違いないだろう。



「心当たり、ですか。心当たりも何も先日僕らは魔王と思しき存在と対峙しまして、それで——」

「それは本当かッ?!」



別に隠す事でも無いのでそう伝えると、毅然とした態度から一変して、慌てた様子で勢いよく肩を掴まれた。

痛い痛いっ!!

な、なんだこの人、めちゃくちゃ力強ぇえ!!



「ま、まぁ兎に角立ち話もなんですし、家の主は不在ですが座ってゆっくり話をしませんか?」

「—っ!!す、すまない。私とした事が取り乱してしまった…。そう言う事なら、有難く提案を受けさせて頂きたい。」




慌てて肩から手を払ったが、かなり力を込められたので痺れるように痛んだ。

「魔王が現れたというのは本当だったのか…」などと呟きながらクレーネさんは落ち着かない様子だ。

…仕方ないか、魔王の復活とあらば一国の危機だろうし。

彼女達からすれば、眉唾モノの情報でも喉から手が出る程欲しいに違いない。

こちらとしても魔王の情報は欲しい所だったので丁度良かった。



「しかし、なんで魔王が現れた事を知ってるんですか?あの場には俺たち以外の人は居なかったと思うんですが…。」



あの夜、魔王と居合わせたのは俺と、ロロと、オリバーさんだけだったはず。

そうなると王国へ魔王が出没した情報を届けたのは一体———?



「あぁ、聞いて驚くかもしれないが、かの有名な魔導士、オリバー・J・カーディナル卿、その本人だ。」


「なっ———?!」



恐らく失言したクレーネさんの後ろで他の騎士が慌てている中、俺は空いた口も塞がらず驚愕の事実に立ち尽くすばかりだった。

すみません、更新遅くなりました…!

引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ