ひやり
誠は宝くじを買って、自宅へ戻る事にした。初めての経験で子供のように胸がドキドキした。
これが当たれば、好きな物が買える。頭の中では当たったイメージしか浮かばなく、時より人目を気にせず、にやりとした。でもまだ当たったわけではない。むしろ当たらない方が多いと、すぐに現実へ戻り、帰宅する事にした。
家に着くとすぐにさゆりが駆け寄り、聞いてきた。
「おかえり。どこか行って来たの?」
誠は靴を脱ぎながら言った。
「ちょっとその辺を散歩だよ。天気も良かったしさ」
「あらそう。珍しいね。普段は家にいるのが好きなのに……」
「俺もそろそろ健康を考えた方がいいと思ってな。すこしばかりの運動を始めようとおもって」
そう言って、リビングへ向かった。
誠は少しひやりとした。普段は目的がないと出る事はほとんどないので、言い逃れをする理由を忘れていた。ヘタに言葉を出すとすぐに嘘がばれる。女性はそういう所に非常に敏感だ。
ソファーに腰を下ろすと、さゆりが冷たいお茶を入れてくれた。
「はい。暑かったでしょ」
「ありがとう」誠は一気にお茶を飲み干した。すごく美味しい。ナベの言っていた事が少しは分かる。
さゆりがにやにやしながら言って来た。
「昨日言わなかったんだけど、美香が学校のダンスコンテストで優勝しちゃってさ。すごく嬉しそうだったよ。でさ、美香も頑張ったんだから、何かプレゼントしようと思ってさ。
今月はちょっと厳しいけど、来月遊園地へ行かない? もちろん理奈も連れて4人で」
「それはスゴいな。確かに最近はどこも行っていないし。来月は久しぶりに行くとするか。美香には内緒で行こうよ。サプライズで面白そうだよ」
「そうね。今月は私もうんと頑張るから。来月楽しみにしようね」
さゆりは誠の肩をポンとたたいた。