お金の問題
ある休日に子供たちが寝た後にさゆりが切り出してきた。
「ねぇ。あなた。今月出費が重なって厳しいのよ。今月はボーナス月でしょ? いくらか家に入れてくれると嬉しいんだけど」
誠は眉毛をピクっと動かした。その話はいつも嫌な気持ちになるが、そうも言ってられない。
「今月は会社の売り上げも少ないから、そんなに出ないと思うよ。新しい社員も入ったし。会社は営業売り上げによって賞与が分配されるが、あまり見込めないよ」
「でも、今月から一番下の子が小学校へ入学するのよ。ボーナス月に必要な物を買っておかないと、あとが厳しいわ。私もなるべくパート頑張るから」
誠はその言葉が一番辛く思う。自分の稼ぎによって生活できない状態。出来れば妻には家の用事だけしてほしいが、頑張るとなると自分も反論出来ない。自分の無力さにいつも悲しく思う。
「分かった。さゆりにも迷惑をかけてすまない。娘のためだ。そうするよ」
そう言って、誠は娘たちの部屋へ行き、寝る事にした。
誠は寝ようとしたが、なかなか寝れなかった。いつも考えているのはお金の事だ。
「もっと余裕のある生活が出来れば。娘たちにも好きなものをいっぱい買ってあげられるし、さゆりにもお金の事で心配かけなくてすむ。何か手はないのか……」
色々考えたが、良い方向に結びつくものはなかった。いつも考えるだけで行動するとなるとリスクも高いし、年齢も年齢だ。現実という名のパンチがいつも自分をノックダウンさしていた。