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そういうわけで、親愛なる父上様。
娘は家出を決行しました。
ああ、心配しなくて結構。母親が頼りなさ過ぎるせいで、娘はしっかりしておりまする。
まあでも、学校を休むのは嫌なので、土日を利用する事にした。プチ家出だ。帰ってくる予定はある。……たぶん。
全財産をもって(といってもバイトをしていない私の財産なんてたかが知れている)、朝早くにこっそりと家を出る。本当は夜が良かったんだが、さすがに初っ端から補導されるのは格好悪すぎるのでやめた。
まだ日の昇っていない空の下、私は駅へと歩いた。部屋にはちゃんと手紙を残してきたから、大丈夫だろう。あの手紙を見て、お母さんズがどういう反応をするのかを見れないのがちょっと残念。せいぜい慌てふためきやがれ。
とりあえず、目的地を決めた(こうしている時点で、もうすでに家出とは呼べない)。
「ふわぁあ……」
う。こんなに朝早くおきるなんて滅多にしないから、思わずあくびが出てしまったじゃないッ! ばか! 誰も見ていないから良かったものの、家出中の身としては少しみっともないぞ。
そんな意味のわからないことを考えながら、私は誰もいない道を歩く。鳥たちのさえずりが良く聞こえた。
駅にはすぐ着いた。
日が昇り始めている。東の空って、朝に見ると本当に金色なんだ……。びっくり。
「今頃、母さんたち起きてるかな……?」
きっと、まだ二人で朝食を作っているところだろう。なかなか起きて来ない私を探して、私の部屋へ侵入するのはもう少し先だ。
ふふふふ。
ざまあみやがれ!
ガタンゴトンガタン、ガタンゴトン……
すぐ近くで、電車が駅に乗り込んでくる音が聞こえる。
私は、慌てて切符を買って、ホームへと駆け込んだ。
とりあえず、お父さん。
貴方のところへ行きます。
それまでに、私に対する弁明をまとめていてください。