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我が家の不思議な母親たち  作者: 天野きつね
第一話 母さん分裂期
5/17

1-4

 結局、夜空の父は答えてはくれなかった。


 朝。私は恐る恐るリビングの扉を開ける。

「!!」


「「さーちゃん!! おはよう!」」


 リビングの中に一歩入った途端、両脇から二人のお母さんに抱きつかれた。

「苦しい! 離れろ!」

 そう叫ぶと、私を解放してくれたが、途端に潤んだ瞳でこちらを見てくる。

「さーちゃんってばひどいわ」

「どうしてこんなに口がわるくなっちゃったの?」

「単なるスキンシップよ」

「スキンシップは大事なのよ」

 かわるがわるしゃべる母さんズ。正直鬱陶しい。

「スキンシップにも限度があるッ」

 私はバシッと言って、踵を返した。リビングから脱出、自分の部屋へと帰還。

「はぁ……」

 頭の中がグルグルとしている。これが混乱ってやつでしょうか。混乱を混乱と認識した事がないし、そもそも混乱するような事態に陥った事がないのでわかりマセン。

 取り敢えず、脳内会議の結果(嘘だけど)、一刻も早くこの家を出ることが最重要事項だということになった。

 私は、カバンを持って、玄関まで急ぎ足で歩く。リビングから二つの顔がのぞいて、目を潤ませていたが、ひとまず無視。気にしていたらきっと学校へ行けないに違いない。

「さーちゃん、どこ行くの?」

「まさか、家出?」

 母さんAと母さんBが顔だけリビングの扉からこちらへ向けて言った。

「学校です」

 私はぴしゃりと言い放つと、扉を開けて、家を出た。


 バタンッ!


 う、わ……。予想以上に大きな音が出てしまった。別に怒ってるわけじゃないのに……。

 あれ? 怒っているのかな? 

 自分が怒っているのかさえ、よくわからない。何だかもやもやした物体が胸を圧迫しているかのようだ。おお、それってミステリー。

 しばらくしまった扉に寄りかかり、息を整える。というか、精神を整える?

「さーちゃんってば、怒ってた?」

「さーちゃん、帰ってこなかったらどうしよう?」

 扉越しに、お母さん二人の声がする。

 取り敢えず帰ってくるから安心していいッス、母さんAとB。

 あんまり金がないから。

 目指すは学校。全ては着いてから考えよう。


「朝食、食べ忘れちゃったなぁ……。お弁当も忘れているし」


ぐー……


 私は、お腹で主張する虫を確認して、ため息混じりに歩き出した。

 ご飯食べるだけのお金、持ってたかなぁ……?


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