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我が家の不思議な母親たち  作者: 天野きつね
第三話 墓場で居眠り
12/17

3-2

 ゆるゆると、光がある。

 ふわふわと、ぬくもりが感じられる。

 私はだれ?

 貴方はだれ?

 ああ、ここは夢だ。


 ――桜。


 誰かの呼ぶ声。

 お父さんの呼ぶ声。

 本当に、お父さん。答えてくれるの?


 ――桜。


 お母さんが二人もいるなんて、聞いていない。

 そういえば、お父さんとお母さんたちの馴れ初めも知らないし、そもそもお母さんたちの名前もわからない。

 どうすればいいの?

 どうすればいいの?

 どうすれば、私は……







「おい、鎖河! 大丈夫か? 鎖河ッ」

 私はがくがくと肩を揺さぶられて、目を覚ました。

「へっ?! な、何?!」

 私が飛び起きてそう言うと、肩をゆすっていた相手は、ホッとしたように肩から手を離した。

「だ、誰?!」

 あたりはもう暗い。少し先のお寺には、もう灯りあった。

 そして、目の前にも小さな懐中電灯があって、私と、もう一人を照らしていた。

 目の前にいたのは、

「へ? 常陸くん?! な、何でこんなところに?! どうして?! え? もしかして常陸君も双子なの!?」

「は? 双子?」

 常陸君が、目を丸くした。でも、すぐに微笑んで(だと思う。暗くてよく見えないけど)、

「よかった。墓の前で鎖河が寝ているから、びっくりしたよ。大丈夫?」

「う、うん。大丈夫、です」

 うう。ハズカシイ。よりによって、何でお墓の前なんかで居眠りしてるんだ、私――ッ!?

 も、もうだめだ。オヨメにいけない……。

「とりあえず、うちにきなよ。ここじゃ、冷えるだろ?」

「え?」

 私が首をかしげると同時に、私は常陸くんに手をひかれて歩き出していた。

「え? ええ?」

 私が驚きの声を上げているのにもかまわず、常陸くんはお寺までやってきた。(って、たかだか数十メートルだけど)

「ここ、俺の家なんだよ。高校は一人暮らししているんだ。週末はよく帰っているんだけど、今日は親戚の家によってから来た」

「え? そうだったの?!」

 何て偶然。ワンダフォー!


 ガラッ。


 そんなふうに感心しているうちにも、私はお寺の中に入ってしまっている。

「親父、ただいま」

「おお。お帰り、悠木。……と、桜ちゃん」

 一年に一度、お盆の時に会っている住職さんが出迎えてくれた。

「悠木、母さんたちは元気だったか?」

「ああ。ムカつくぐらい元気だったよ」

「そうか、それは良かった。――ああ、二人とも夕食はまだだね? こっちへいらっしゃい」

 住職さんにそういわれて、私たちは夕食をいただいた。何だか、ながされている気がするぞ。

「今日はもう遅いから、泊まっていくといいよ、桜ちゃん。いくらここが田舎だからといって、犯罪者が隠れていないとは限らないからね」

「ええ? いえ、そんなお世話になるわけには……」

「でも、他にどこかあてがあるのかい?」

「……」

 ない。あるわけがない。だって家出だし。

「ね?」

 住職さんの笑顔。その隣に、常陸くんの笑顔。

 にこにこ。にこにこ。

 そっくりな、二つの笑顔。

「……お世話に、なります」

 断れるはずがありませんっ。




 何か、成り行きでここに泊まる事になってしまいマシタ。

 お父さん……

 思えば、私って結構ファザコンですね。

 でも、お父さんがどういう人だったかなんて……

 実は全然覚えてないんですよ。


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