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我が家の不思議な母親たち  作者: 天野きつね
第三話 墓場で居眠り
11/17

3-1

 おとーさん、おとーさん。

 お元気ですか?




「元気なわけないよねぇ……」

 死んでるし。

 私は、お墓に花を供えた。


『鎖河家』


 そう書かれたお墓の下に、私のおとーさんが眠っている。

「はぁ……」

 ため息もしたくなりますって。

 私は、そこそこ綺麗なお墓の前の段差に座る。

「つかれた」

 口に出すけれど、別に誰かに言っているわけではない。聞いている人もいないし。


 小さな墓地。田舎の森の奥にあるような小さなお寺の一角だ。だけれど、森を越えて向こうには小さな商店街があるから不便ではない。

 このお寺には、住職さんが一人いる。だけど、今はどこかへ出かけているみたいだ。のぞいても誰もいなかった。


 父上殿。私はどうすればいいのですか?

 答えてよ。


 何だか、むなしくなってしまった。

 何で、お母さんたちは二人いたんだろう。

 そして、どうして私はそれに気がつかなかったのかな。

 なんとなく、ここにくれば何かわかる気がしていた。

 でも、

「何にも変わんないなぁ」

 どうしてだろう。

 こんなに悩むなら、お母さんたちも、いっそ……


 いっそ、隠し続けてくれたほうがよかったのに。


 私はそう思いかけて、首を振る。

 そんなこと、今更考えても遅い。というか、そもそも隠していた事に問題が……

 ああもう! どうしろっていうんだ。

 私の悩みを他所に、鳥のさえずりや木々の揺れる音がよく聞こえた。

 平和だ。

「ふわぁああ……」

 私は大きくあくびをする。しまった。最近、悩みすぎて寝ていないし、さっきまでの新幹線で疲れたから、眠気が……


 私は……

 私は、どうしたいんだろう。

 お母さんが、お母さんたちだと知って、私は本当はどう思ったの?

 そりゃ、始めは戸惑ったけど。

 その後、怒りがこみ上げてきて……

 混乱して、それを整理するためにここまでやってきて……

 それで……


 それ、で……


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