3-1
おとーさん、おとーさん。
お元気ですか?
「元気なわけないよねぇ……」
死んでるし。
私は、お墓に花を供えた。
『鎖河家』
そう書かれたお墓の下に、私のおとーさんが眠っている。
「はぁ……」
ため息もしたくなりますって。
私は、そこそこ綺麗なお墓の前の段差に座る。
「つかれた」
口に出すけれど、別に誰かに言っているわけではない。聞いている人もいないし。
小さな墓地。田舎の森の奥にあるような小さなお寺の一角だ。だけれど、森を越えて向こうには小さな商店街があるから不便ではない。
このお寺には、住職さんが一人いる。だけど、今はどこかへ出かけているみたいだ。のぞいても誰もいなかった。
父上殿。私はどうすればいいのですか?
答えてよ。
何だか、むなしくなってしまった。
何で、お母さんたちは二人いたんだろう。
そして、どうして私はそれに気がつかなかったのかな。
なんとなく、ここにくれば何かわかる気がしていた。
でも、
「何にも変わんないなぁ」
どうしてだろう。
こんなに悩むなら、お母さんたちも、いっそ……
いっそ、隠し続けてくれたほうがよかったのに。
私はそう思いかけて、首を振る。
そんなこと、今更考えても遅い。というか、そもそも隠していた事に問題が……
ああもう! どうしろっていうんだ。
私の悩みを他所に、鳥のさえずりや木々の揺れる音がよく聞こえた。
平和だ。
「ふわぁああ……」
私は大きくあくびをする。しまった。最近、悩みすぎて寝ていないし、さっきまでの新幹線で疲れたから、眠気が……
私は……
私は、どうしたいんだろう。
お母さんが、お母さんたちだと知って、私は本当はどう思ったの?
そりゃ、始めは戸惑ったけど。
その後、怒りがこみ上げてきて……
混乱して、それを整理するためにここまでやってきて……
それで……
それ、で……