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異形の戦士  作者: 樹 雅
第3章 ~蒼暗の水~
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39話 美緒と長谷川

 研究所の執務室で美緒は一人で考えていた。


 異形の事、異形となり人に戻る桂木翔の事、妹美沙の事、考えは取り止めもなく増えていく。思考の堂々巡りになっていることに気が付いてはいたが、止める事はできなかった。


 きっかけがあれば、全てとはいかないが、もう少し何か判明する事があるのは、科学者としての経験でわかっている。そのきっかけが掴めずに、同じ事をなんと背も繰り返していた。


「美緒さん?」


 いつの間にか執務室に姿を現した長谷川が、美緒に呼びかけている。返事を返さないどころか、何も見ていないような美緒に、長谷川はもう一度呼びかけていた。


「美緒さん……美緒!」

「なに」


 ギロリと美緒の瞳が動いて長谷川を見る。


「大丈夫ですか?」

「だから、なに」


 不機嫌そのもので聞き返す美緒に、長谷川はため息を付いていた。


「天気もいい事ですし、外に出ませんか?」

「炎天下に出ろと?」

「篭っていては気は沈むだけですよ」

「…………」


 ギロリと見たままの美緒に、長谷川は再びため息を付く。


「私と、デートしましょう」

「なっ……」

「そうしましょう。気晴らしにもなりますよ」

「なっ、何であなたとデートしなくちゃいけないの! そんな暇はないわ!」


 立ち上がって叫ぶ美緒の手を取って長谷川は引張って行った。


「ちょと、待ちなさい!」

「往生際が悪いなあ。美緒さんは、これから私とデートするんです」

「だから、どうして私が!」

「おや、私が嫌いですか?」

「そう言う事じゃないでしょう!」

「そう言う事ですよ」


 涼しい顔で長谷川は美緒を引張って行って車に乗せた。

 こうなると美緒も諦めるしかない。助手席でおとなしくなった。それを横目で見た長谷川は車を発進させる。


 研究所から走り出した車に、美緒と長谷川が乗っていた事に気が付いた優香は、首を傾げながらも後を付けることにした。


「また、異形が出たの?」


 美緒に用があったのだが、異形が出たとなれば話は別だ。慌ただしく出てきた二人を追って車輪は知らせる。途中で思い出したように悠馬へ連絡を入れた。


『はいよ』

「遅い。もっと早く出てよ」

『おいおい、こっちは仕事中だ。そう簡単に出れるか』


 カンベンしろよと言いたそうな悠馬の声が聞こえる。


「あんた、今どこ?」

『ああ?』

「いいから、どこにいるのよ」

『店だ。バイクの渡しが一件入っているからな。お客待ち』

「じゃあ、違うのか……」

『何が違うんだ?』

「美緒長谷川さんと一緒に慌てて出て行ったから、てっきり……」

『一緒に? で、おまえは何をしているんだ?』

「後を追っている所よ」

『……そのまま後を追うつもりか?』

「そうだけど?」


 悠馬のため息が聞こえてきた。


「なに?」

『……やめておけ』

「どうして?」

『馬に蹴られて何とやらだ』

「はぁ?」


 呆気にとられてしまった優香だった。スマートホンからは笑い声が流れてくる。


『それにしても、あの長谷川がねぇ。ただのお坊ちゃんじゃなかったんだ。あいつがねぇ……』

「いや、だって、あの二人が?」

『さあな。まだわからんが、いいんじゃないのか』

「あんたはいいの? 狙っていたんじゃないの?」

『ああ、俺はいいんだ。別に狙っていたわけじゃない。面白そうだから口説いてみようと思っただけ出しな。遊ぶにはいいが、一緒にはなれないな』

「そんなもの?」

『ああ、そんなもんだ』

「まあ、異形がでたわけじゃないなら、いいか。じゃあね、悠馬」


 少し落胆したように優香はスマートホンを切る。そして、好奇心を発揮して美緒と長谷川の後を付ける気になった。


 そのことを優香は後悔する事となり、美緒と長谷川の写真を撮り続けた。


 後々、その写真を見た美緒が、赤くなりながらネガごと全てを

出するように、優香に申し出ることになる。




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