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異形の戦士  作者: 樹 雅
第3章 ~蒼暗の水~
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36話 それぞれの…

3章プロローグです

 紫村美沙は、異形との戦いのうえで気が付いた事があった。

 それは、移動手段を他人に頼るしかないと言う事である。


物の怪やあやかし、それらを封滅する退魔行の時は、チームを組んで行動するためワンボックスカーを使用していた。

異形の者が出た時は、翔達とチームを組む事になるが、彼らとは普段は別々の場所にいる事が多かった。そのため、異形の者が出てから動くとなると、その場所まで一人で行かなければならなくなる事が多い。


翔や四郎のバイクに乗せてもらうのはいいが、二人がいない時のことを考えると、自分で移動できる手段が必要だった。

車の免許は取得するまでに時間がかかりすぎ、取得しても渋滞に巻き込まれる可能性がある。

それでは意味が無かった。


そこで、小回りが利き免許の取得時間も短くて済むバイクの免許を取得する事を考えた。


幸い、美沙の知り合いには詳しい者がいる。


決めた後の美沙の行動は早く、バイクショップ『ブルムヘルム』に出向いて、店主である北川悠馬に教えを請う事にしたのだった。

初め、悠馬は呆れたようだったが、美沙の本気を見て取って、最短で取得できる方法を伝授したのである。もちろん、暇そうにしていた四郎をこき使ってであった。


元々、反射神経や運動能力のある美沙は、瞬く間に悠馬や四郎の教えを飲み込み、七日ほどで免許を取得してしまう。

これにはさすがの悠馬も苦笑してしまった。四郎に至っては、開いた口が広がらないようである。


「本当に面白いな。いくら教えたからっと言って、一発で受かるか。普通」


 免許を取れた事を報告に来た美沙に、笑いながら悠馬は言ったものだ。


「取れるように教えてくれたと思っていたが……違っていたのですか?」

「いや、その通りだ。俺や四郎は、取れるように教えたつもりだ。だけどな、一発で通る者は、ほとんどいないのが普通なんだ」

「わたしは、普通とは違いますから」


 そう言った美沙の顔を悠馬は忘れないだろう。寂しそうな愁いを帯びた微笑み、それは普段の美沙からは、絶対に想像できない微笑だった。






 桂木翔は妹の凛に引張られてデパートへ来ていた。

 近々に迫った北川香織のバースディプレゼントを選ぶためである。

 翔としても、嫌だとは言えなかった。

悠馬には世話になっていたし、その妹の香織にも世話になっている。


「なあ、凛。俺は四郎と一緒に考えるから……」

「何言ってんのよ、兄さん。四郎さんは四郎さんだけで、プレゼントを用意しないといけないのよ。兄さんはあたしと一緒に選ぶの」


 何もわかっていないな、そんな風に凛は指と首を振って見せる。 本当に分かっていない翔は、そんなものかと首を傾げてしまった。


「いや、でもな。四郎も一人だと悩むと思うし……」

「本当に分かっていないの?」

「何がだ?」


 聞き返す翔に、凛は呆れてため息を付いてしまう。


「兄さん、四郎さんは……」

「四郎がどうした?」

「……何でもない。ともかく、四郎さんの事は気にしなくていいから」

「?」


 やはり首を傾げる翔だった。


「ほら、それよりこれなんかどう?」


 凛が手に取って見せたのは、中に写真を入れられる星座を象ったペンダントだった。


「あたりきじゃないのか? それに大丈夫なのか、アクセサリーで?」

「学校へは持っていかないわよ。休みとか出かける時にしか使わないわ。そのくらいは、十分わかっているって」

「そういうものなのか?」

「で、兄さん」


 香織へのプレゼントを選びながら凛は言う。


「美沙さんの誕生日は?」

「紫村?」

「そう、いつなの?」

「さあ?」

「さあって、何をやっているのよ。彼女の誕生日ぐらい覚えておきなさいよ」


 振り返って翔に詰め寄る凛だった。戸惑った翔である。


「ちょっと待て。美沙は彼女でもなんでもない」

「兄さん」


 責めるような強い言葉に、翔がさらに戸惑う。


「美沙さんが名前で呼んで欲しいと言ったのでしょ。なのに彼女ではないなんて、美沙さんに甘えるのもたいがいにして。ちゃんと、認めなさいよ」

「凛」ため息を付いた翔だった「おまえ、誤解しているぞ」

「どこがよ」

「俺と美沙は、そんな関係じゃない」

「じゃ、どんな関係よ」


 言えるものなら言ってみてと凛の瞳が翔を見ていた。適当な言い訳は許さないと凛の全身が言っている。


 言えるものなら、翔も言ってしまっていた。が、言う訳にはいかない事である。


「おまえ、どうしてそこまでむきになる?」


 問い返す翔に、凛はつまってそっぽを向いた。義姉になって欲しいと思っているとは翔に言えない凛である。

前に尋ねてきた時に、凛は美沙が気に入ってしまった。瑞紀とは違う雰囲気の女性。自分の名前のように、凛とした美しさを見せる姿に見惚れてしまったとは言えなかった。


「だって……」

「だって、何だ?」

「兄さんこそ、どうなのよ?」


 堂々巡りを始める兄妹である。




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