21話 求めたもの
プロローグその2
女はデスクの上に投げ出した写真をボーと見ていた。
事件現場で撮った物なのに、誰も信用してくれない。
この写真を撮った時は、スクープだと内心小躍りしたものだ。誰も掴んでいない真実、それが自分の手の中にある事が誇らしかった。
こんなチャンスは二度とない。
その思いが、身の危険もかえりみずに撮影に及ばせた。これで、報道は記者として一人前に見てくれるだろう。
そう思っていた。
だが、現実はそうではない。
確かに、編集局長が指摘したようにこの写真だけでは、新しいヒーロー物の撮影と言われても仕方が無かった。
被写体は鮮明に写っていたが、周りの風景がほとんど写ってはいない。これではどこで写したのか、はっきりとは判らなかった。場所が特定できなければ、疑われても仕方が無い事である。
局長とのやり取りが思い出された。
「これだけで、駅前の事件と畑山の事件を起こしたのは、この紅の奴と黒い奴です。そう言われても信じられか? ふざけてんじゃねぇぞ!」
「ですが、これはあの場所で撮った物です!」
「じゃ、聞くが、ここに写っている者は何だ?」
「わかりません。ですが、これは真実です」
「バカヤロウ! わかりません。で、通るとでも思っているのか! あたま、冷やしてこい!」
返す言葉が出てこない。いや、返す言葉はあるが、何を言ってもまともに相手にされないのはわかっていた。
真実なのに、誰も真実とは思わない。その事が悔しくてならなかった。
報道を携わる者として、真実を報道する事が正義である。その信念において、嘘は言え無かった。
だから、自分で撮ったこの写真の真実を、追う事を決める。
女が求めたのは、真実。
それは……。
正義を意味しないもの。




