19話 そして
1章はここまで
警察から解放された七人は、まだ畑山オートコース場に残っていた。
長谷川の車の横に悠馬のワンボックスカーが止まっている。翔も自分のバイクを二台の車の傍まで持ってきていた。
「ところで、翔」
真っ直ぐに悠馬は翔を見ていた。
「おまえ、本当にいいのか?」
「何がです?」
「あの力は人には過ぎたものだ」
「それは、良く判っています」
「また、ああいう奴が現れたら、おまえはどうする?」
「紅の異形の力は異形に有効です。見ているだけなら力なんか要りません」
答えてから翔は、悠馬が真剣な瞳で見ている事に気がつく。
「どうして。と言いたそうですね」
「ああ。あの力を持った者の運命。そう思っているのか?」
「思ってはいません」
翔は首を振った。
「そんな都合のいい言葉で、かたずけられる訳がありません。俺は俺に出来る事をやろうとしているだけです」
悠馬は溜め息をつく。
「四年前と同じにか?」
少し目を見開いた翔だった。
「なんだ? おまえ、前にも同じような事をやっていたのか?」
不思議そうに美沙が翔を見る。何かを思い出したように、四郎が笑った。
「あの時のおまえは、女のために必死だったな」
「俺は、あの時と何一つ変わってはいない。相変わらず無力で弱い」
「それでもだろう」
「ええ、そうです。二度も同じ思いをしたくなかったのに、こんな力があったのに……俺は何も出来なかった。護る事も救う事もできない力に何の意味がありますか」
「だからか?」
「今のところ、この力を持っているのは、俺だけですから」
「みんなのためにか?」
その悠馬の言葉に翔は笑って首を振る。
「違いますよ。みんなのために、そんな事はバカらしくってやってられません。俺の都合です」
「おまえの都合?」
「そうです。俺の家族、悠馬さんや四郎、そして……」
翔は美沙を見た。
「この女が巻き込まれて、死んでしまうのが嫌なんです。こいつは、特に突っ込んで行きますから」
恐ろしく真剣な瞳で翔は言う。
「三度も同じ想いをするのは、ごめんです。そのためだったら、この力を使います。見知らない他人の事なんか知った事じゃない」
それを、みんなのためにと言うんだ。
そう思っていたが、悠馬も四郎も何も言わずに笑う。
「まあ、無理はせんようにな。四年前と同じで、手助けが必要なら、いつでも言ってくれ。力になれるようだったら力になる」
悠馬の言葉に、四郎が親指を立てて見せた。
「ありがとうございます」
翔は微笑む。
「その時は、遠慮なく頼らせてもらいます」
次回から2章




