ルームメイト
龍斗が寮に着いた時にはもう日が暮れ始めていた。寮には学園から20分くらい歩いたところにあった。寮は男女共有の150階以上あるらしいが、龍斗はあまり気にしてなかった。気にしているのはルームメイトがどんな奴なのか、ということのみだった。
龍斗は寮の中に入るとそこは巨体なエントランスだった。まだかなりの人がいる。ほとんどが一年だろう、キョロキョロしてる者や、あきらかに迷っている者が半分くらいをしめている。
龍斗は辺りを見渡し、テレポーターを見つけるとそちらに向かって歩いて行く。テレポーターに入ると、
「テレポート、3617号室」
そう叫ぶと龍斗は光に包まれた。光が消えるとそこは3617号室の前に立っていた。龍斗は鍵を開け中に入ると一人の男がいた。
男は龍斗に気づくと気さくに話かけてきた。
「よお、お前さんが俺のルームメイトか?俺はアルゴ、アルゴ・アリクセイ。よろしくな」
アルゴと名乗った男は龍斗に近づくと握手を求めてきる。
「俺は一城龍斗だ、よろしく」
そう言うと龍斗は求めてきた握手に答えた。
「一城ってことは、お前さんが初日のホームルームにさぼった不良ってわけだ」
「なんでそれを知ってんだよ……あと龍斗でいい」
龍斗はふたつあるベッドの奥の方に荷物を投げ込んだ。
「なんでって俺らクラス一緒だせ。クラス11の出席番1番と2番」
龍斗は聞きながらベッドに腰かけた。
「クラス11か。クラスの名簿とかねぇの?」
「名簿?ちょっと待て」
そう言うとアルゴは自分の鞄をあさり始めた。少し待ってみると中からボロボロの紙が出てきた。
「あったあった、これだ」
と言いつつボロボロの紙を渡してきた。
「んでこんなボロボロなんだよ」
とは言ってるが龍斗は人のことを言えない。なぜなら逆の立場だったらその紙はこの部屋に存在しなかっただろうから。
「んなこと言うんだったら見せてやらねぇぞ」
アルゴはボロボロの紙に手を伸ばしてくる。
「わーったよ、これでいいからちょっと待てって」
「ったく、細けーこと気にする男はモテねぇぞ」
「るせぇよ」
そんなことを言ってる龍斗だが口元は少し笑っていた。こんな軽口を叩ける相手がいる日常が続いていくと思うと龍斗は嬉しくて仕方ないのだ。そんなことを思いながら名簿に指を這わせていた龍斗だが。ある名前で指が止まる。それを見ていたアルゴが声をかけてきた。
「二志篠鈴?あー、いたな。かなり可愛かった、知り合いか?」
(知り合い?んなもんじゃねぇよ)
「おい、龍斗?」
動揺している龍斗の肩をアルゴが叩いた。
「あ、ああ。昔からの知り合いだ」
そこでアルゴが何かに気づいたみたいに指を鳴らした。
「ああ、一城と二志篠。十家関係か?」
十家という単語がでたとたん龍斗の眉が一瞬動いた。
「十家のこと、知ってんのか?」
聞かれたアルゴが腕を組み胸を張って語り出した。
「そりゃあ十家は有名だからな。大和大国が誇る十の家計、それが十家。他家とは格が違う強さを誇るだったか?特に今代は全ての家から才児が出ているらしいな。龍斗もその一人だろ?」
龍斗は感心したように、はたまた呆れたようにため息をついた。
「よく勉強しているな、当たりだよ」
「たりめぇーだろ、この世界は情報がなかったら生きていけねーって」
「そーかよ。ほい、返すよ」
龍斗はボロボロの紙をアルゴに差し出した。
「もういらねーよ」
アルゴは受け取った紙を丸めてゴミ箱に投げ入れた。
「龍斗、飯行こうぜ、飯。腹へった」
アルゴは龍斗を無理やり立たせてドアの方へ押しながら歩いていく。
「分かったから押すな」
二人はドアの向こうに消えていった。