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胸好きと友人と悩める少女

 初めて物語らしきものを書いてからの二作目です…最初は一作目同様短いものにしようとしたのですが、執筆中にどんどん構想が大きくなっていき、とても自分の技量で書けそうにも無いものになってしまいました…執筆を中断してから数ヶ月の時もながれ別の話でも作ろうと思ったのですが、著名な方のアドバイス本を読むに一度書き始めた作品はちゃんと書ききったほうが良い、との事です……でも長編なんてとても書けないし…でも少しづつなら…ということで連載という手段をとらさせていただきました…つたない作品ですが、がんばって書いていこうと思ってます、もし感想などがありましたら是非お願いいたします。


 

  『僕のペットは爆乳介護士 〜敏感な乳房が咽び泣く居宅内調教〜』


  『方言彼女-北海道- 放っておけない後輩は道産子巨乳 ミキ』


  『集団痴漢電車 爆乳狩り!!』 

 

 一時間以上にも渡る度重なる葛藤の末選びぬかれたこの三本の作品、いずれも甲乙つけ難い魅力を放っている。

 「はぁぁぁぁっ、わっかんねえなぁ…」

 深くため息を吐きながら、手元にあるDVDを交互に見合わせるが、どうやら未だに今晩の一品が決まらないようだ。

 若かった頃とは違う、精力も減退してきた四十路の男にとって性欲の充填方法はかなりの死活問題、なにせ回数が限定されている以上一回の行為に求められる質が大切なものになってくる。

 「もういいや、あきらめよう…」

 ようやく観念してビデオショップのレジに足を向ける。


 「ありがとうございました!」

 …息が白い、会計の後自動扉を抜けた先は寒々しい空の下の街並みだった。

 「えーっと、こっから一番近いコンビニ何処だったっけ?」

 手に少し大きなレンタルビデオ袋を抱えた男がそう呟いた…結局三本とも借りてしまった事にほんのり後悔しながら夕食を求め歩きだす。

 「こっちのおかずも買わないと飢え死にしちゃうからなぁ」

 なんて誰も聞いてないのに年相応のギャグを口にしながら夜歩きをしている情けない男にもそれなりの人生のドラマがあった。



 父子家庭に生まれた彼は、幼いこれより男手一本で育て上げられてきた。

 そのせいもあって一際目立つ女性のシンボルである乳房に特別の感情を抱く事になったらしい。


 「好きなことを仕事にすると嫌いになるからやめておいたほうがいい」


 女性用下着のメーカーに就職すると決心した彼に『K』が言った言葉だ。

 Kは学生時代よくアダルトビデオのモザイクに対してずっと文句ばかり言っていた。


 「なんで日本はこういう所は欧米化しないんだ!」とか

 「性教育の為には包み隠さず公開するべき!」とか

 政治のプロパガンダの様にテレビ画面に向かって叫んでいた。

 単純に「中身が見たい!」と言えば可愛げもあったかもしれないが、Kのプライドが許さなかったのであろう。

 その後Kは猛勉強をかさね念願の産婦人科医になったが勤務してから間も無く女性不振に陥ったらしい。

 いくら好きなものでも毎日、毎日、毎日見続ければ嫌気もさしてくる…との事だ。

 しかし同じ様に夢叶い念願の下着メーカーに就職した彼は違った。

 酔えば酔うほどに強くなる酔拳の様に、おっぱいに係われば係わるほどにおっぱいの魅力に取り憑かれていく。

 一目正視しただけで、その女性のバストサイズを正確に判断し、的確なアンダーウエアをチョイスする能力を買われ入社して間も無く開発部の主任を任される、その後順調に出世していった。

  『L’ange』

 フランス語で天使の意味を持つこの「ランジェ」という商品は彼が開発したものだ。

 周囲の脂肪をかき集めることによりパットを使用せず自然な谷間を作る。

 『Project G』

 少数のため簡単に生産ラインにのせれないビックサイズブラのバリエーションを増やすためのプロジェクト。

 日本よりも平均周囲の広い欧州の下着メーカーと新商品を共同開発し、かわいいブラシャーの種類に悩む豊乳な婦人たちの力になった。

 これらの業績を高く評価されドイツから『Meister』(マイスター)の称号を授与されるが 「自分にはまだ早い」とそれを拒否、以来彼は尊敬の意味も込めて

 『おっぱいソムリエ』と呼ばれるようになった。


 「ずっと胸の事ばかり考えていたら、いつの間にかこんな歳になっていた」


 彼の職場は九割方女性が働いているのだから、出会いは幾らでもあったのだが彼女達がいくら彼を遊びに誘っても彼は断り続けていた。

 彼に好意を持ってはいたがまったく相手にしてもらえなかった女が妙な噂を流した。


 「課長は、実はゲイらしい」


 その後、開発部の課長にまで昇進した彼に同性愛疑惑が浮上し勝手に空気を読んだ女性社員達がアプローチ禁止令なるものを作ったそうだ、ちなみにその時の疑惑の相手はKである。


 そんなわけで独身を謳歌する彼に食事をこしらえてくれる相方もおらずコンビニで買い物を済ませ、いつもの家路に着こうとしていた。

 「あーあ、もう十一時近くじゃねえかよ…」

 ようやく自宅のアパートに着いたものの時計を見ればもう深夜近く…ビデオショップで無駄にしてしまった時間を悔やみながら二階にある自室に向かうとき、

 「んっ?…誰かいるのか?」

 …階段に誰かがうずくまっている……子供…だろう、長い髪の毛を見るに女の子のようだ…。

 「どうしたの、こんな時間に…ウチの人達が心配してるんじゃない?」

 「………」

 最初、暗がりで分からなかったが少女の着ている服は、私服ではなくてパジャマの様だ……なんだかめんどくさい事になってしまったものだ…。

 「あのさぁ、俺の部屋この先なんだけど…通っていいかな?」

 「………」

 別段断わらなくても普通に上がっていけばよかったのだろうけども彼の罪悪感が少女を無視する事をためらわせた。

 「………」 

 「………」

 沈黙が続く…がこれではいくら待ったところでラチがあかない、明日の仕事の事もあるし…彼はコンビニの買い物袋に手を伸ばし、

 「これ、食べる?肉まん、ちょっと冷めちゃったけど…」

 「………」

 「…んじゃ、ここ置いとくな、…それじゃぁ…がんばれよ…」

 「………」

 カッ、カッ、カッ…

 ガシャン…バタンッ…

 少女の脇を抜けて自宅に入る…。

 「…ったく…俺にどうしろっていうんだよ…ああするしかなかったろう…」

 そうぼやきながら冷蔵庫に向かいビールを取り出す、本来ならば借りてきたビデオでリフレッシュしていたはずだが、さすがに今はそんな気分ではないようだ…。

 「…小学生…くらい…だよなぁ、なんだかなぁ…」

 プシュゥ、…ゴキュッ、ゴキュッ

 「そういや、昔Kの奴が持ってきたビデオにでてた女の子…あれくらいの感じだったっけ…」 


     ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 唐突だがこれからのストーリーに係わってくるので『K』について説明する。

 冒頭で書いてあるように女性自身に幻滅し女性不振に陥ったKは一挙性癖が反転して西日暮里に通うようになった、…その…なんというか…極端な人間なのである。

 もともとノンケの時、女性から人気がある奴ではなかったが、心機一転ホモの道に進んでからも男性からはモてなかった、いくらゲイとはいえ彼らにも好みというものがあるらしい、…その事でKも随分悩んでいた…。

 ある日Kが特別仲のよい友人にのみにメールを送った(一人しかいないのだが)

 

 「ついに彼氏できた!イケメンでしょ?」


 そう短く書かれた文章に一枚の写真が添付されていた。

 浅黒い肌に長身の青年、名前はソバン、カンボジアからの留学生らしい。

 Kは満面の笑顔で彼に抱きついていたが、反面ソバン君の目は笑ってはいなかったのがとても印象的だった。

 Kは事あるごとに友人にメールを送った。

 『デート中なう』 『遊園地なう』 『ラブホテルなう』

 頼まれてもいないのにご丁寧に動画まで貼り付けて逐一報告していた、…たとえお金で買った偽りの愛でもKにとっては初めての恋愛だったのだからしかたない…。


 …そして事件が起こった。


 『不良外国人達による日本人集団暴行事件』  


 …そうニュースでは名前付けられていた…。

 本気でソバン君との恋愛を考えていたKは遂に彼にプロポーズした。

 しかしソバン君の生まれた村のしきたりでは、結婚の際多額の結納金が必要になってくるらしい、学生である彼には、当然用意できるわけもなく、彼はKに泣きついた。

 「金は俺がなんとかする、俺を信じろソバン!」

 Kはソバン君を抱きしめながらそう叫んだ、なにか変なスイッチでも入ったのだろう。 …産婦人科医といえば立派な医者である。

 医者といえばみんなお金持ち…というわけでもないのだが、そこは『腐っても鯛』

Kにもそれなりの蓄えがあったのだ。

 結納金を指定されたカンボジアの銀行口座に振り込んだあとKはソバン君に指示されたホテルで落ち合うことになっていた。

 愛のために全力で走りホテルにたどり着いたK、しかしその部屋の中にはソバン君はいなかった。

 「なかには誰もいませんでした」

 …と、もし言えたのだったら何千倍もよかったのだが部屋の中には浅黒い…そして鼻の高いおじさん達が待ち構えていた。

 ざっと見積もって十数人の男達に囲まれて、ナイフを突きつけられ…そして縛られる。 …そこから先の出来事の説明はK氏の尊厳のために伏せさせて頂く。


 …Kはソバンに売られたのだ。


 ゴールドラッシュを夢見る採掘者の如く多額の借金をしてまで日本に入国したソバン。 学生ビザが切れる前に間抜けな日本人女性をつかまえて永住ビザを手に入れる予定だったが現実はそう甘くなかった。

 言葉が満足に喋れない上に日本人の欧米コンプレックス、アジア差別をよく理解していなかったソバンは、積極的に女子学生達にアプローチをかけるがまったく相手にされず、次第に生活も苦しくなってくる…。

 …そしてその後日銭を稼ぐために同郷の売春斡旋業者に男性向けホストクラブを紹介してもらう。

 …不景気が原因なのだろうか…どうにも買い手がつかない…たまに客がついたと思ったら大抵はその晩限りで、仕舞にはツケで遊んでいった御客に逃げられ、その負債をソバン自身が背負い込む事になる…。

 ミイラとりがミイラになるとはこの事で、自分が捕食者だと信じて疑わなかったソバンだが、一転捕食される側に落ちていった。

 …しかし、ソバンの人生はまだ終わっては、いなかった…。


 …ついに現れた。


 本物のカモ。


 それがKである。


 生理的に受け入れられなかったのだろうか、西日暮里のどのホストからも振られるK。 日本人からもう相手にされないと悟ったKはついに外人に手をだした。

 『国が違えば価値観も違う』

 「自分がモてないのは、文化のせいだ!」と公言してたKについに恋人ができる。

 …たしかに貧しい村で生まれたソバンにとって、世の中金が全てであり、金のためなら簡単に人をも殺すという意味合いでは文化も価値観も違っている。

 完璧なカモを捕まえたソバンだったが、その実日本の生活に見切りをつけていた。

 いくら思い道理に動くとはいえ、Kが男である以上結婚はできないし第一日本の生活はソバンが当初考えていたよりもはるかに厳しいもの、そこで事前に用意していた本来日本人女性用であった結婚詐欺プランを実行に移す。

 …だが問題があった。

 金を手に入れて母国カンボジアに帰るも、飛行機等の交通機関を使う以上自分の身元が割れてしまう、日本の警察はカンボジアの警察と違い優秀な上にしつこい…。 

 「なにか、特別な方法で国に帰らないとな」

 そう考えたソバンは、件の売春斡旋業者にインド人のマハラジャを紹介してもらった。 ビジネスのため日本に滞在している彼は、インド有数の資産家で個人で何台もの石油タンカーを所有していた、…そうソバンの計画とは、その石油タンカーに身を隠し帰国するというものである。

 そのマハラジャは業界内では有名な大の日本男児好きの変態、そして当然ソバンの取り交わした条件は『安全な自国への帰路』と『K』の交換だった…。

  

 …あわれ屈強な男達とマハラジャの慰み者になってしまったK…不幸中の幸いといえば激しく暴行を受けたものの臀部以外には酷い外傷がなかったこと、それとKの勤務している病院の担当弁護士が非常に優秀な人間であったため、事件は闇に葬られることなく公の元で裁きを受ける事になったのだ。

 結局マハラジャは何人ものスケープゴートを用意し、政界に圧力をかける事で本人は、刑を免れたのだが、この事件にたいそう腹をたてた彼は、売春斡旋業者ならびその関係者たちを皆殺しにした…無論その中にはソバンの名前も入っている…。


 …愛と金と社会的信用の三つを同時に失ってしまったK、……たしかに暴行により目に見えるような怪我を負わなかった事は幸運ではあったが、そのかわりKの心には深い傷を残すことになる。

 …Kは、女性不振に継ぎ、極度の男性不振になってしまった…。

 Kの友人(一人しかいないのだが)による必死の介護にもかかわらずKの心は開かない…だがKの患者達はKの心の回復を待ってはくれない、「割に合わない」という理由で昨今減り続けている産婦人科医であるKは病院にとっても患者さん達にとっても貴重な人材だった。

 自分を捨て仕事に没頭するK、…余計なことを考える暇のない職場というものは当時のKにとっては救いだったのかもしれない。


 …一年が過ぎ、二年が過ぎ、三年以上の歳月が流れた…。

 しばらく音沙汰もなかったKから、その友人(一人しかいないのだが)の携帯電話に一通のメールが届いた。

 

 『天使の存在を確認、生きる希望が沸いてきた』


 …これはなにかのネタかなんだろうか…… 人を笑わせるにはイマイチだし第一脈絡もない…それに笑われるべきなのはK自身の人生であり今の彼には決して自分以外の他人を喜ばせれる余裕などないはずなのだ…まあ普段から意味の分からない事ばかりするKだが過去に起きた事が事だけに折り返しKの携帯に連絡をとってみた。


 『あっ もしもし〜 メール読んだ〜? いやさ〜実はこの前いろいろあってさ〜小児科の応援にいったんだよね〜 それでね〜』

 

 よほど話を聞いて貰いたかったのだろう、かれこれ半年ぶりの友人との会話だというのに近状の報告もなにもなしに一方的に自身の事を喋りだした。

 

 『でさ〜診察したんだよ え〜っと6歳くらいだっけかな〜女の子なんだけど最近おまたに赤いブツブツができたって言うんだよ〜 でさ〜予防接種の手伝いだったんだけどさ〜一応診てあげる事にしてさ〜 だってさ〜疾患を確認しないとさ〜 どこの科に回したらいいのか解んないでしょ〜んでとりあえず服脱いでもらって患部見せて貰ったんだ〜  …あっ ソン時は全然やましい気持ちとかなかったよ!だって患者さんだしな。』


 なにやらKは、私は医者であるから的な事を言いたいのであろうがソン時と言っている時点で今現在はやましい気持ちがあるのだろうか…。


 『そんで下着脱いでもらってからアソコ見せてもらったらさ〜 イヤ〜なんていうかこう…すごくフォルムが締まってるっていうかさ〜 昔の俺が創造していた完璧な形だったんだよね〜 …そうだね〜 たとえるなら彼女のは 「ハマグリ」 だったら俺の普段みている患者さん達は ん〜 なんていうかこう… 「イソギンチャク」… みたいな? 本当に綺麗だったんだよ〜 まさに ザ マ○コ だったんだよな〜』


 Kの普段みている患者さん達のイソギンチャクよりもK自身の方が計り知れないほどに気持ち悪いのだが友人はなにも言わずにKの話を聞いていた。


 『結局の所あれなんだよ、俺は女性に幻滅したんじゃなくてただ単にアレの形が俺の求めるものじゃなかっただけなんだよ! よかった〜 俺全然まともだったんだな〜』


 6才児にホンキで興奮している時点で、もうすでに手遅れなのだが過去にいつ自殺してもおかしくない状態のKを目の当たりにしてきた友人は少し安堵していた…


 『そっか… で、天使ってなんなんだよ?』

 

 『えっ、それ聞いちゃいます〜?』


 『……』 


 『あれからさ〜 調べたんだよね〜インターネットで、んでスンゴクいいサイト見つけたんだよ〜 それでさ〜 洋ロリっていうの?いろんなDVD買ったんだけどやっぱアッチのは凄いわ〜 特にジェシカちゃん、この娘が最高なんだわ〜 ホント結婚したいわ〜』

 『…イヤッ…なんにせよ元気になったみたいでよかったよ…』


 『っだよね〜!とにかく俺の方はもう保存用はとってあるからお前ん所に布教用で買ったやつ送るわ〜 あっ でも送るのはジェシカちゃんのじゃないよ〜 いくらお前でも変な意味で兄弟になりたくないしな〜』


 …そんなこんなでKから送られてきたDVDは今はパッケージが開けられないままに押入れに封印されている 児童ポルノ法の取り締まりもあり、もし興味がないのであればすぐにでも処分するべきだったのだがもしかしたら少女用のブラの開発のサンプルになるかもしれないという雑念が破棄を踏みとどまれさした…そしてのちに友人はその事をひどく後悔することになる…。


 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  



 

 


 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

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