マイ ライフ チェンジング!
背が高くて
足が長くて
姿勢が悪くて
胸が小さくて
可愛くなくて
自信が無くて
生意気な
メスオオカミ
汚い、自分が汚い。
嫌い、自分が嫌い。
自分を守る、嘘ばっか吐く毎日に、そろそろ愛想が尽きてきて。
どうしようか悩んだ末に、出逢ったのがキミで。
その笑顔に自分は壊れてしまうから。
逃げて、
早く逃げて。
私がキミを食べてしまう前に。
memori1
「ごめんね、その日用事があって…」
私の達者な口から出たものは意味も無い嘘。
「用事…?歯医者なんだぁ」
ありえない。何言っているんだ、この口は。
来週の土曜日は自分の好きなアニメが見たいだけ。
もちろん、そんなこと言える訳なく大親友を悲しませてしまう。
「日曜日なら遊べるよ」
そう言って、友を慰め、事はまぁるく収まる。
嘘だらけの人生は空しい。
空っぽの私。
はぁぁ…
めんどくさいなぁ…
プールなんて…要らないよ。
「沙羅紗ぁ、今日は休むねー」
大親友の菜那穂はそう言ってプールサイドへ飛び出した。
「元気だな…」
何でだろう、高校生にもなってプールだなんて。
「あずっぽいど~いやだよ~」
「私もです、ていうかその呼び方やめてくれない?」
4組の親友に話しかける。
2クラス共同プール。
私は3組だから、4組と一緒だ。
「いいじゃん、かわいいし。じゃあ、あずにゃん」
「…」
思いっきし嫌な顔された。
「うん、ごめん、嘘嘘。梓~プールイやだよぅ」
「仕方がないよ、時間の流れとはそういうものだ」
なんか、論じ始めた親友。
「神様は、その人に超えられない試練は与えない!」
「…大丈夫?なんかあった?」
「なんにもないよ~」
…私の友達は個性的な人ばっかだ。
「雨ふってくんないかなぁ~」
「ありえないって、早く行こうよ~」
私は梓に続いてプールサイドに出て行った。
「ヤバイッ!次、数学じゃん!移動移動っ」
あわてて、私は走った。
だいたい、一時間目にプールがあったのがいけないんだ。
まさか、あんな楽しいとは思いもしなかった。
中学生の時は男子と同じで、いやな思い出しかなかったのだが、女子だけとは!
まさに、天国のようであった。
だから、遊びすぎて、いつの間にか時間になってて…
急いで着替えたものだから下着が変な感じ。
「由愛!いそごうっ」
「ちょっと、まって!」
「うぅ~下着がぁ下着が…変な感じっ。いやだよぅ!」
超ぎりぎりで教室に入った私達がもちろん最後で、結構注目をあつめてしまった。
うっわ…こういうのって嫌なんだよね…
いそいそと机に座ったら、鐘が鳴った。
「きりーつ、れいっ」
日直だった由愛を見て、なんか凄いなぁ…と感心してしまう。
私的にはと友達とかいるほうじゃないのかって、良く思う。
大親友の菜那穂はリーダーっぽいから学年全員と話したことあるし、
夏音だって男子とか色々話すほうだし、
萌佳もそんな感じ。
梓は優しいから好かれてるし…
周りにそんな人たちがいると、いつも友達が少ないように思えてしまう。
それに…みんな男子と話すのに私は喋ったことがない。
だいたい、何を話せばいいのか分からない。
男子なんて、何で盛り上がれる?
アニメの話?
スポーツの話?
日常会話?
それとも…好きな人について?
ありえない。
私自身、三次元の男子は嫌いだ。
というか、人間があまり好きじゃない。
つまらないから。
つまり、私は現実逃避が大好きなのだ。
オタクってヤツで…
コツッ
いきなり何かが頭に当たった。
「イテッ」
くるりと、後ろを向くと夏音が指差している。
「…」
手紙だ、ノートの端を千切ってペンで、何か書いてあった。
「日曜日ナナホと遊ぼう!3人で」
夏音と菜那穂は小学生の頃からずっと仲良し3人組だ。
今回のお誘いも菜那穂と決めたのだろう。
が、
「…あ~・・・」
どうしよう。
日曜日は梓と萌佳とカラオケに行く約束なのに…
「ごめん、日曜は用事があってさ~家族で、遊園地♪」
そう書いて後ろに投げた。
なんとなく、本当のことが言えない。
菜那穂を悲しませたくないから…
私は菜那穂のことが大好きだから、要らない嘘まで吐いてしまう…
中学校の時からの癖。
もう、直らないんだ・・・
多分私の口から出る言葉の半分は嘘なんだろうか・・・
この頃…いや、以前からずっと、私は嘘に溺れていた。
memori2
「おかーさん、日曜日さ梓と萌佳と雑貨屋いくよ~」
わざわざ雑貨屋、なんて言って。
カラオケって言ったら怒られそうだから…
そんな要らない嘘から始まる私の一日。
「ねぇ、沙羅紗~8月頃に夏祭りあるじゃん」
「あるね~」
「一緒に実行委員やらない?」
「えっ?実行委員…って、3年とかいるんでしょ?」
「いるよ~、各クラス2人ずつ、色んなことが出来るんだよ~」
実行委員かぁ…確かにそういうのは楽しそうで好きだけど…
「面倒そ~…梓はやるの?」
「だから誘ってるんだよ~きっと楽しいよ~」
梓はやるんだなぁ…悪くないけど…
そしたら男の子とか、喋れるかもしれない…!
そんな淡い思いを抱きながらイエス、と梓に伝えた。
実際、実行委員に挙手したのは私だけで、
一緒にやることになったのは佐藤 眞衣さんだった。
「やだなぁ~あたし、実行委員なんてやりたくなかったぁ~」
「へぇ~…?」
じゃあ、なんで最終的にあたしがやります!なんて、言ったんだろう?
私達は放課後実行委員は集まれ、との指示で、会議室に向かっていた。
うぅ、キンチョーするなぁ…
先輩とかいるんだろうな…
ドキドキと胸を高鳴らせ会議室のドアを叩く。
「失礼しますー…」
わぁっ涼しい!
冷房がガンガンに効いている。
「あ!梓~」
「沙羅紗!こっちこっち」
梓はもう、来ていたが、まだ1年の6クラスの内4クラスくらいしか来ていなかった。
私は梓の隣に座って、
「萌佳もやるの?」
と、聞いてみた。
「ううん、吹奏楽部が忙しくてやれないって…」
「そっか…」
萌佳がやれないのは仕方無いけど…
ココなら…あんまり緊張しなくていいかも。
みんなもいるし、辛気臭くないから…
「何をやれるんかねぇ?」
「楽しそうじゃん!沙羅紗もやってよかったでしょ?」
「うぅん?まだ、わかんないよ~」
さすが全学年4クラスずつ来ると半端ない人数になってるなぁ…
えっと…実際、3×4で12?それに…1クラス2人だから…24?
あっ、でも、こう考えると丁度いい人数なのか…?
「はい、ちゅうもーく!わたしが今期夏祭りの実行委員会を担当する、山田 香澄です。ヨロシク!」
なんか…やけに明るい女の教師が入ってきた。
「んで、先生は用事があるから司会は3年の代表が進めておいて~」
たった自己紹介で先生は帰っていった。
そして、廊下から鼻歌が聞こえる…
「じゃあ―まずは自己紹介から、僕は3年代表、鈴木 健太です」
うぇ~自己紹介かぁ~
面倒だな…
「えっと…私は2年3組の大上 沙羅紗です」
ありきたりの自己紹介をして、私は席に座った。
「全員、自己紹介がおわったね。次は委員長とかを決めようか」
推薦で結局、委員長はこの人鈴木さんになった。
「副委員長の二年、横田 瑞希です」
「書記の卯月 一麻です、一年だけど頑張ります!」
確か…横田さんって、萌佳の友達だったような・・・
「では、早速仕事です。実行委員会の出し物は、毎年恒例の結成バンドのライブと、色々ランキングで決まりになってます」
バンドかぁ…かっこいいな、やってみたい!
「バンドは誰でもいいです、やりたい人はいますか?」
やりたい!
「ねぇ、梓~やろうよ!楽しそう!」
「やっぱり?私もやりたくてさ」
私達が手を挙げた他、一年男子2人になった。
なんか…結構決まるの早いんだ…
バンドのライブは何の反論も無しに私達になったし、ランキング決めは他5人がやることになっている。
ポスターや看板、アーチ作りは、その他の人となって、そのまま各自解散に。
「終わるの早かったねぇ」
「うん、以外と」
「バンド楽しそうだった!何にする?」
「盛り上がる曲がいいな!ライブっぽいの」
「アニソンじゃダメかなぁ…」
「私もそう、思ったけどサー…」
梓がそう言い終わる前に後ろから声をかけられた。
「先輩方っ!」
あれ?さっきの…バンドのライブを一緒にやることになった…
「えっと…書記君の…誰だっけ?」
「おいっ、沙羅紗、それは酷いでしょ」
「ボクは卯月 一麻です」
「俺は早生 夕弥です」
メガネの子と書記の子だ。
「ほら~、二度目の自己紹介」
「ははっ、ごめんね。覚えんの難しくて」
「どの辺が難しいの?私は梓」
「私は…ていうか、なんで名字言わないの?えっと、沙羅紗」
そんな言い合いの中、
「あのっ宜しくお願いします」
わぁ…えらいなぁ…
「いいのいいの、気にしないでって」
「そうだよ~呼び捨てでいいし」
梓…さすがにそれは断られると思う。
「えっ?でも…ダメです。梓先輩と沙羅紗先輩で」
ちゃんと敬語だし、いい子だなぁ…
「で、用は?」
「練習とか…いつがいいかな、と」
「明日の放課後。はオッケー?」
明日あした…
「私は大丈夫!書記君とメガネ君は?」
「大丈夫です」
「じゃあ…財布を用意しといてね」
財布…?
やばい…今、金欠…
「はいっ」
「またね~」
どうしよう…金欠…はあぁ…
どこも大丈夫じゃないよ…
自分で言っといてなんだけど…
「ただいまぁ~」
誰もいない。
「あっ今日、海波が歯医者だっけ?」
その瞬間生まれる、私の最大の武器、悪知恵、が働く。
まず状況理解。誰もいないか確かめろ、バレたらやば過ぎ。
記憶捜査。アレが何所にあるか思い出せ。
なんせ中学1年以来だ、この行為。
次、自己能力。大した異常なし。家具と荷物に細心の注意を払え。
事を行うにつれ必要とする総合能力は完成。
これから、行動しろ。
頭の中で起き上がる私の悪知恵。
私の悪魔達。
準備完了。襲撃。
私はそぉっと食器棚へ近づく。
ギギィ
木が軋む古い音が緊張を余計に緊張させる。
視界が捉える食器の片隅。
なんの異常も無いお菓子の缶。
そっと手につかみ掌に広がる缶の生温さ。
じわぁっと額に汗が浮かぶ。
パカッ
と音を立てて開いた缶の蓋。
中には、お金。
そこから、千円札を抜き取って…
全てを元通り、何事も無かったかのようにしまう。
作業終了。
おつかれ、私。
あとは、普通に接するだけ。
「ふぅぅ…」
何年ぶりだろう?
この作業。
中一の時、初めてお小遣いと言うものが貰えて…
その時、偶々見た、缶から出るお金。
足りなくなったら、ココから拝借する。
高校生になったら、しなくなった、この行動。
中一でどれだけやったことか…
そして芽生える心の感傷。
突然、背後から罪悪感と言うモノに襲われる。
「…仕方ないよ…」
そう言葉にして誤魔化そうとしても遅い。
いつもいつも、要らない感傷ばっかに襲われる。
それはまだ、私が正常であることの表し。
でも、邪魔だった。
付きまとって離れない。
これじゃあ…泥棒と同じじゃん…
今更生まれる罪悪感に“バカ”と言いのける。
もう、遅いんだよ。
私は元に戻れないんだよ。
居間に座って、テレビをつけるニュースなんか見るわけ無い。
ポチっと録画アニメ再生ボタン。
もう、遅い。
携帯が鳴っている事にも気付かない。
気付けない。
…気付きたくなんか無い。
夏休みまで、あと少し。
長い長い夏休みが始まろうとしている…