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10年も経って初めて人にすがって泣いた。
寂しかったのだ。自分はこんなにも寂しかったのだ。
だけど誰にも頼れなかった。
先輩以外に頼るなんてできなかった。
先輩以外に涙をみせるわけにはいかなかった。
昨日まで10年もたった一人で耐えてきたのだと改めて思った。
ずいぶん頑張った。
ただ大沢君がいなければ、まだ頑張っていたはずだ。
もう、頑張らなくてもいい。
そう思うとまた涙がこぼれた。
10年も一人で、よく頑張ったな。
頑張った自分を誇りに思う。
救ってくれた大沢君をありがたいと思う。
浅井は涙を拭いて、大沢にありがとうと言った。
「でも」
大沢はまだ泣いていた。
「多分俺、先輩に嫉妬すると思うんだけど」
浅井が吹き出した。
「笑い事じゃない!俺きっとこれからも先輩と比べたりして、」
「比べたりしないよ」
笑いながら浅井が言った。
「比べないよ。先輩と全然違うもの。だって先輩こんなに可愛くなかった」
可愛い?!!
大沢はがつんと殴られたような衝撃を受けた。
初めて言われる形容詞だ。
そんな表現されたことは今まで一度もない!
「もう先輩の話はしないわ。私ももうあの時の私じゃないしね」
「え?」
「私はもうとっくに大人なのよ。大沢君」
「はぁ」
「寒くないの?裸だよ?」
突然浅井が言い出した。
「……!誰が脱がしたんですか!って、浅井さんだってそれ……!」
大沢が笑い出した。
お互い体を離して落ち着いて見合うと、大沢は開いたパーカーとめくれたTシャツを着ているだけで、浅井はストッキングとショーツを片足の途中に引っ掛けていた。
「あなただって笑えないわよ!」
浅井が笑って大沢にブルゾンとトランクスを渡した。