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浅井は体のいくつかの痛みに耐えながら、胸元で大沢の頭を抱えていた。激しい呼吸のせいで熱い。
じきに背中を抱く手に力が入ってきたので、痛いよ、と伝えた。
「だって浅井さん、これ、仕返しなんだろ?」
涙声で大沢が言った。
「こんな目に遭わされて、俺、どうやって忘れたらいいんだよ」
またきつく抱いてきた。
「痛いってば」
浅井は大沢の短い髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
「私を、忘れるの?いいよ、それでも」
そして大沢の頭に口をつけた。
「今度は私がしつこく追い回すわ」
ぐいっと大沢が浅井の体を自分から離した。
「……本当?」
浅井はまた痛みを堪えて頷く。
するとまた大沢にきつく抱きしめられた。
「嘘みたいだ……」
大沢は泣いていた。
「痛いってば!」
浅井は笑っていた。