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「それでね、」
浅井が話を続けようとしたが、大沢の体から力が抜けたのが分かったのでその顔に目をやった。
大沢は右手の甲で両目を覆っていた。
浅井は首を傾げて、その顔を覗き込んで、上げている右腕を掴んだ。
大沢が泣いていた。
「大沢君」
「すみません。俺が泣くのも筋違いっていうか、だけど、」
大沢が泣きながら、微笑んで言った。
「先輩、浅井さん残していくの、辛かっただろうなって思って」
そして大沢が大きくため息をついた。
「ずっと浅井さんと一緒にいたかったんだろうなって」
死んでしまってもう10年も経つのに未だに自分の悲しみそっちのけで、事故の責任なんてこと考えてるような彼女。
残していきたくなかっただろうな。
可哀想だな。先輩。
大沢が涙を拳で拭うと、浅井がトランクスに手をかけていた。
「えっ……?!」
ジーンズはとっくに脱がされて放り出されている。
「あっ……浅井さん……!」
「私に触らないで」
浅井の左手が大沢の首元を押さえている。
そしてトランクスに手を差し込まれ、大沢が息を飲んで顔を背けた。
ついさっき全身で脱力したばかりなのに、浅井の動作一つで大沢はまた熱くなってしまう。
また簡単に呼吸を増やしている。
トランクスもむりやり下げられ、大沢は喉の奥から、くっ、と声を出した。
無理だ、耐えられない。
浅井は腰のあたりに触れている。
まずいだろ。どうするんだよ。大沢は焦りながらも気持ちの昂りに抗えない。
もう荒い息も隠せない。
ただ、目は閉じていた。
薄明かりの中、今の自分の状態は見るに耐え難い。
苦しい。苦しい。
浅井の手が足を滑る。
大沢の体を仰向けにさせる。
両手が腰の左右に置かれる。
両手?
手?
手じゃない
手じゃない!
両脚……!
大沢が目を開けた時に、強く熱い圧迫を感じた。
同時の強い快感で上半身を跳ね上げ、浅井の体をかき抱いた。
薄明かりの中、上にいる浅井の体を強く抱きしめ、熱と圧の一番奥に押し込んだ。
たったそれだけで、終わった。