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戦っているのは私一人じゃないんだ。
まだ19の、10も年下の男の子も、今の私と同じく戦っているんだ。
私は諦めないかも知れない。
賭けになるけど、大沢君に助けてもらえるかも知れない。
当たって砕ける可能性の方が高いけど、当たれるなら諦めないことにした。
この子も、君島君に当たれる日が来ればいい。
きっと君島君なら、砕けない。
砕けても多分、当たったことは後悔しないはず。
だってひとりぼっちで怒りを抱えて生きていくのは苦しいから。
浅井は悶々と頬杖をついて考えていた。
「あの」
バーテンの声がして、浅井が顔を上げた。
「俺もう上がりますので、今日はありがとうございました」
「あ、そうなの。こっちこそありがとう。君島君によろしくね」
「……自分で言ってください」
ちょっと吹き出した。
しかし、バーテンともこれが最後かもしれない。きちんと礼を言っておこう。
「いろいろありがとう、バーテン君。この前のことも本当に助かったわ」
「……俺の名前は原田だとこの前言いましたよ」
「あ!そうだったわね!ありがとう原田君!」
「いや……もうタンデムはないですから。それじゃ失礼します」
やはり、浅井は笑った。
そしてバーテンがいなくなり、最後に入れてくれたホワイトレディを飲み干して、浅井も店を出た。