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JOY  作者: co
第9章・最後のホワイトレディ
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 ぞくりとして、浅井は腕を押さえた。

 バーテンの独り言は予想していた言葉だったのに。

 ただその言葉を口にした時のバーテンの表情に、まるで電流が走ったかのように一瞬痺れた。


 バーテンの顔に、わずかに怒りが見えたのだ。


 怒り

 何に対する?


 わかってもらえないことへの怒りだ。

 理解されないことへの怒り。

 諦めたつもりの怒りがまだ燻っている。

 諦めたつもりの、理解への切望。



 どうしてわかってくれないんだ。



 その怒りをまだ胸の奥に秘めている。

 諦めてはいない。

 彼は解ってくれる誰かが欲しいのだ。


 それが恐らく、君島君。


 バーテン君が何を抱えているのか知らないけれど、本当は君島君に理解して欲しいと思っている。

 じゃなきゃ、あんな怒りの表情はできない。



 ああ、嫌だ。

 それは、私も一緒だ。一瞬でわかってしまった。

 先輩を心の奥底に沈めたいなんて大嘘だ。


 それはまた先輩を死なせることだ。


 浅井は両手で顔を覆った。

 私は何てことを考えていたんだ。

 そんなこと、できない。

 だけど、無理。

 だって、わかってもらえない。

 誰にもわかってもらえない。

 だから諦めたい

 諦めたいのに



『何がそんなに怖いのさ?』


 そう、怖いの。

 わかってもらえないってことを、決定的に知らされるのが怖いの。

 だから諦めたいのに、諦めたはずなのに。




「あの。大丈夫ですか?」

 バーテンの低い声が聞こえた。

 浅井が、はっと顔を上げた。そして自分のグラスを見下ろし、空になってたのでまたホワイトレディを頼んだ。

 そしてまた考え続けた。


 どうしたらいい。

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