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JOY  作者: co
第9章・最後のホワイトレディ
83/130

 一時間以上も歩いてジガーレイに到着した。

 何日も会社をさぼっているので曜日感覚がないが、今日は金曜日だと君島君が言っていた。

 あれから一週間。

 先週初めてここに来たんだわ。

 遠い昔のことのようだ。


 鈴の音をたてて扉を開け、空いていないテーブルの間を抜けてカウンターの席についた。

 バーテンが相変わらず無愛想に働いていた。


「ね~え、原田君。この前バイクに乗せてた娘、彼女なの?」

 頬杖をついた女性客がバーテンに訊ねた。

 バーテンは無視しているが、浅井はぎょっとした。

 私?あ、そうとも限らないわよね?彼女がいたら乗せるわよね?

「あんな真昼間にノーヘルで、かっこよかったわよ」

 私だ……!見てたんだ……!


「ねぇ原田君!ん~、ダイキリ追加!」

「はい」

「彼女なの?」

 バーテンが注文を受けるタイミングで、客が質問した。


「……そうです」

 バーテンが表情を変えずに低い声で答えた。


「えええええええ~~~~っ?!!!」

 カウンターの客が全員大声を上げた。浅井も含めて。

「やだもう信じられない原田君、ダイキリキャンセル!」

「あなたのファンがこれだけいるの、気付かなかったの?」

「そうよそうよ。もうしばらく来ないから!」

「あ、私は来るから心配しないで!」

「抜け駆けっ?ありえない!」

「私も来る!」


 賑やかな若干年嵩の女性客たちが一斉に席を立った。

「ありがとうございました」

 とバーテンの気のない挨拶が聞こえた。


 他の店員がカウンターのグラスや皿を片付けている間、バーテンはシェイカーやナイフを洗って水切りに置き、

「ご注文は?」

 と浅井に声をかけた。

 浅井はまだ驚いたままだったのだが、とりあえず最初に頼む物は決めてあったので答えた。


「領収書」


「お支払いがなければ発行できませんが?」

 バーテンが即答した。

「払ったじゃない、1万円!って、ねぇ、私、あなたの彼女なの?」

 浅井は小声で訊いた。

 バーテンが珍しく、驚いた顔をした。

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