表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JOY  作者: co
第8章・白とシルバーの店
82/130

 浅井がくすっと笑った。

 怖いなんて……。

 そして話題を変えた。

「そういえばあなた、どうしてこんなところにいるの?」

「え?あ、僕ね、もうすぐ5時からそこの公民館で道場。本当は金曜日はフリーなんだけど、指導者がちょっと都合でいないとかで僕ヘルプなの」

「え?」

 言っている意味がさっぱり解らない。

「あ、言ってなかったっけ?僕、少林寺拳法の有段者なんだよ。道場で練習というか今はもう指導的立場でね」


 あ。だから、あの時の獣のような姿……。

 そうだったのか……!


「だからさ。段持ってるからあんまり街で暴れちゃいけないんだよね。ごめんね。彼氏蹴っちゃって。でも手加減はしたよ。あ、彼氏じゃないのか」

「そうだったの」

「浅井さんには謝るけど、あいつには謝らないよ。僕の顔をからかうヤツはいつでも殺してやるつもりで僕は強くなったんだから」


 一瞬、君島の目付きが鋭くなった。


「時々、どうして法律なんかあるのかと思っちゃうよ」


 こんなに美しい子も、そんなにもがいているのかと思った。

 外側から見ただけじゃ、何にもわからない。

 あなた自身がそうじゃない。

 浅井は心の中で君島に語った。


 気付けばバーテンも姿を消していた。

 君島ともこの公園で別れることにした。

 最後になるかも知れない、とは考えないようにした。涙が出るから。



 浅井はまた一人で街を歩いた。

 最後になるかも知れない町並みを記憶するようにゆっくりと歩いた。

 有名なフランチャイズの喫茶店で独特の濃いコーヒーを飲んで時間稼ぎもした。

 夜になったらバーテンの店に行こう。



『なにがそんなに怖いのさ?』


 怖い?怖くなんかない。

 諦めてるだけ。

 どうせわかってもらえないのだから。


 バーテン君もそう言うはず。

 私と似てるっていうならね。



 しばらくそこで過ごし、夕焼けが消えてから店を出て歩き出した。

 夜になってまた気温が下がり、首が寒い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ