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必需品の大きめのイヤリングと香水。
雑貨屋さんで求めたイヤリングは、オレンジ色の大きな菱形。
鏡に映った自分の顔に、首を傾げて笑ってしまった。
誰?この元気そうなお姉さんは?
嘘みたい。髪型と小物でこんなにも変わるんだ。
香水は今日は無理だと思っていたら、しばらく歩くと専門店があった。
中に入ると、華やかなデザインのボトルに囲まれて夢の空間のようだ。
どのようなものをお探しですか?と店員が寄ってきた。
香りは決めていた。
薔薇。
店員が、5つほどボトルを持ってきてそれぞれを試験紙に吹きつけ、浅井に渡した。
試験紙を渡される前に、浅井にはもう香りがわかった。
どの香りからもあのピンクの球の香りがする。
霧のように消えていくその香りが目に見えた。
全部、霧のように消えていく。
こんなところで先輩の香りが霧のように消えていく。
泣かない。
泣くもんか。
一度大きく息をつく。
どれも薔薇の香りがする。
だからその中で一番楽しそうなタイトルを選んだ。
今度はこのゴールドのボトルに先輩を閉じ込める。
ね、先輩。
一緒に帰ろう。