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JOY  作者: co
第7章・赤の塊
70/130

 胸がギュっと熱くなった。

 下の名前を呼ばれるのは初めてだった。


「鈴乃。君は悪くないよ。全然悪くない。あいつらが全部悪い。200%あいつらが悪い。鈴乃は何にも悪くないよ」


 こんな時なのに、嬉しい自分に浅井は混乱した。

 だからやはり首を振って、答えた。


「悪い……。私が、いるから……」

 そう口に出すと涙がこぼれそうになった。

「私、もう先輩に、」

 涙の堰が切れそうだった。


 その時に、先輩が言った。


「逃げるな」



 逃げるな?

 浅井はびっくりして先輩を見上げた。



「そっちに逃げるな。自分に逃げるな」



 そっちに逃げる?

 自分に逃げる?

 私、逃げてる?

 自分に?

 自分に、逃げる?



「逃げるなら、俺のところに逃げてこい」


 浅井はやっぱり意味が分からず、眉を顰めた。そしてその途端に涙の堰が切れた。

 その涙を見て先輩は友人を押しのけ、浅井の頭を抱えた。


 苦しい。痛いよ、先輩。

 そう思いながら、そうかこの力に守ってもらえばいいんだと思った。


「俺は強いよ」

 先輩がそう言った。


 そうか。強い先輩に守ってもらって泣いててもいいのか。そう理解した。

 だから先輩のシャツの胸あたりを掴んで、言った。

「うん。逃げる。先輩に」


 浅井は泣きながら、とても幸せだった。

 先輩がいればずっと幸せなんだと思った。

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