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JOY  作者: co
第7章・赤の塊
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 嫌だ、嫌だ。声も出せずに浅井は何度も首を振る。

 もうこんなこと嫌だ。

 首筋に吸い付く大沢から強い酒の臭いがする。

 嫌だ。動けない動けない動けない。嫌だ嫌だ嫌だ。もうはやく、


 こんなことはやく、終わってしまえばいい。

 そうやってあの時も絶望した。

 その記憶がフラッシュのように蘇った。



「……先輩……」

 声と息の間の掠れた音が漏れた。



 それを聞いた大沢が弾かれるように腕を立てて浅井を見下ろした。

「やっぱり、そうなんだろ!忘れてねぇんだろ!なら最初からそう言えよ!」

 浅井は怒鳴り声に目を閉じてまた体を固める。

「事故で、命がけで助けられたんだって?野球部のキャプテンに?」


 どうして、知ってるの。

 浅井は唇を噛む。


「忘れられないよねぇ。ムリだよそんなの。それじゃさ、あのチビ、何?バーテンは何?」

 大沢がまた両肩を強く押さえる。

 浅井はまた強く目を閉じる。


 先輩……


「からかったの?バカにしたわけ?俺を!」

 嫌だ、嫌だ。浅井が首を振る。

 また大沢が手を浅井の体に滑らせる。

「どうせ最後にはその先輩のこと持ち出して、俺を、」

 浅井が抵抗して拳を持ち上げた。

 それにちらりと大沢の視線が奪われた。


 そして、視界の端に部屋の奥の壁際の、赤い塊を捉えた。


 浅井の両肩を押さえたまま、視線がしばらくそこに留まった。


 赤い、何か、毛糸?

 編みかけの、何か、赤の、

 赤い、編みかけの、マフラー?





 大沢君は赤が好きなの?

 まぁ、はっきりした色だから好きかな

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