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JOY  作者: co
第6章・ピンクの球
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 軽く食事をして、メインは栗尾が見つけたという飲み屋のはずだったのに、スペイン料理の店で二人はワイン二本空けていた。

 大沢はともかく、栗尾は酒に弱い。

 話題には上げなかったが二人とも気にしていたのは浅井のことで、何の話も盛り上がらずに空回りする。

 せめて場所を変えれば、と大沢が、ぼちぼち出ようと栗尾に言った。

「うん?そうね、ちょっと酔っちゃったわぁ……」

 栗尾が真っ赤な顔を上げて笑った。

 ちょっとじゃないだろ、と大沢は苦笑し、栗尾がもたもたしているうちに支払いを済ませた。

 出口で待っていると栗尾が小走りでほとんど抱きつくように大沢の腕にすがりついた。

「ごめんね、払わせちゃって……」

「いいよ」

 どうせクリスマスも何もないのだろうから、今節約する必要もない。

「次のお店は私が払うからっ」

 また栗尾が赤い顔を向ける。それを見下ろして、大沢は頷いた。

「で、店ってどこ?」

「うん」

 栗尾が俯いた。

「なんだよ」

「うん。となりのホテルの最上階のバー」


 ……!!!!


「アホか!こんな格好で入れるかよ!」

「きゃははは!そうね!ムリだよね~!」

 栗尾が笑い転げている。

 その姿に、大沢はむくむくと怒りを膨らませた。

「じゃあさ、部屋で飲むのは?」

 栗尾が斜め下から上目遣いで大沢に微笑みかけた。


「部屋、取ってあるんだ」

 栗尾はそう言って、俯いた。


 そこまで言わせて、やっと大沢は栗尾の言っている意味を知った。


「私、弱いからすぐ寝ちゃうかも知れないけどっ!」

 真っ赤な顔をした栗尾が笑顔を向けた。



 嘘だな、と大沢は思った。

 確かに栗尾は酒に弱いけれど、さっきの店でワインを空けたのはほとんど自分だったと今思い出す。

 栗尾は一杯で真っ赤になる体質だ。それ以上は飲んでなかった。



 そんなもんだろう。

 大沢はまたそう思った。

 自分はずっとそういう付き合いをしてきた。

 自分はそういう男なんだし、こういう栗尾を断る理由もない。


 だから大沢は頷いた。

「俺まだ相当飲めるよ」

 栗尾が首を傾げてくすくすと笑った。

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