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JOY  作者: co
第6章・ピンクの球
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 午前中仕事が手につかなかったせいもあり、定時で終えることができなかったため事務所に部長と浅井の二人きりになった。

 それでも9時前には片付け、挨拶をして帰ろうとしたら呼び止められた。

「浅井さん、昼間のことなんだけど・・・」


 ……うう~ん……。休憩時間に何をしようと自由ではあるのだけれど、さすがに会社の前のコンビニでのことだから部長も見てたのかと恥ずかしくなった。


「はい、あの、みっともないことをしました。以後あんなことはしません。失礼しました」

「いや、それもそうなんですが、」

「は?」

 部長が今一歯切れが悪い。

「その、昼間の彼とはお付き合いが?」

「いえ、とんでもない」

「では田村設備の大沢くんと?」


 ……なぜ部長にバレてる……?


「やはりそうですか……。そうですね……。何から話したらいいか……」

 部長が片手で額を押さえた。

 なんだろう一体。

「浅井さんは、以前親しい男性を事故で亡くしてますね?」


 ……え……


「実は知っていたんです。履歴書をいただいた段階で、社長があなたの名前を覚えてましてね」

「どうして」

 浅井の血の気が引いた。

「事故から何ヶ月も経ってない時期でしたし、社長が大変同情してましてね。即決でした。そして本来あんなことはしないものなんですけど、親御さんに連絡をしまして」

 浅井が目を閉じた。

「なぜか住所も電話番号も履歴書と違ってましたが、あのあたりに浅井さんは3軒しかないんですね。104で訊いて最初の浅井さんでしたよ」


 親とは縁を切ったつもりだった。


「不幸な娘なので就職はなんとかとお願いされました」


 聞きたくない。なぜそんなことを今。


「実はですね。本題は、大沢君なんですが」


 頭がガンガンする。


「彼と別れてもらうことはできませんか?」


 何を言われてるのかわからない。


「社長の縁続きの娘さんが大沢君とお付き合いを始めたいそうなんですよ」


 浅井が顔を上げた。


「この不景気に解雇されるのも大変ですよ。転職に有利な年齢も過ぎてますよね」


 脅しですか。しかもこんな前時代的な。いつもの浅井ならそう言うかも知れない。


 しかし今はいつもの浅井ではない。


 礼をして俯いたまま、会社を出た。

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