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JOY  作者: co
第6章・ピンクの球
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 パチンコ屋の駐車場に車を停めて、大沢はハンドルに顔を伏せていた。いくら頭を振ってもあの残像が焼きついて消えない。

 もうたくさんだ。

 女に不自由したことのない大沢が、ここまで恥をかかされたことは初めてだ。そのことだけで腹が立って仕方がない。そんな女じゃないはずの浅井が大沢が告白してからこんな女になったのだとしたら、見抜けなかった自分がバカだ。

 ああ……うんざりだ!


 しばらく運転席でぐずぐずしていると、携帯が鳴った。会社で持たされているものだ。無視するわけにはいかない。

「はい。大沢です」

『おお!俺!田村!』

「ああ」

『今日飲みにいこうぜ!』

 通話を切った。

 田村はあの時本社事務所にいて、浅井がバイクに乗るのを恐らく事務所内の全員と見ていたはずだ。

 俺を慰めるつもりか笑いものにするつもりか知らないけど、冗談じゃない。

 電話を助手席に放り出した。


 直後にまた鳴り出した。

 しばらく鳴らした後で渋々取った。

「はい、大沢」

『大沢君?私!栗尾です!今大丈夫?』

 これも勘弁してくれ……と大沢はシートに背中をもたれかけた。

『今日仕事終わったらちょっと飲みに行かない?いい店見つけたんだけど!』

 大沢は返事をしない。

『もうすぐクリスマスじゃない?どこでパーティしようか探してるとこなの!一緒に行ってもらえない?』

 クリスマス。予定はキャンセルだな。何も決めてないけど。

『どうせ大沢君はクリスマス予定があるんでしょ?その前に一度飲もうよ!』

 こいつ……。今日のことに触れない。

『別に私は大沢君が誰と付き合ってても構わないけど、大沢君気にする?』

 それ以上か……。それ以上のことを、言ってるのか。

『それに、大沢君が誰と飲んだって何にも言わないでしょ?』



「ああ。どこに行けばいい?」

『ふふ。行ってくれると思った!定時で終わるから、6時に名駅!』

 忘れていた。元々俺は女とこういう付き合いをしてきたんだった。

「わかった」

 栗尾が誘っているのは、酒とそれ以上のことだ。そして大沢はそれを受けた。


 大沢はずっとそういう付き合いをしてきた。付き合っていない女と関係を持つ。関係を持ってから付き合う。付き合いを止めてからも機会があればホテルに行く。

 それが俺の女との付き合い方だ。浅井さんが言っていた南営業所の事務員とも付き合ってはいないがホテルには行った。

 それなのに浅井さんに限っては、気付けば先に好きになっていて声もかけられずに、あのチビの言うような今時小学生でもやらない片思い。


 気のせいだったんだろう。何か勘違いしていた。俺はそういうタイプじゃないんだ元々。

 だいたい浅井さんのようなタイプと付き合ったことなんか一度もなかった。


 どうかしていた。


 まぁいい。栗尾とホテルにでも行けば気が晴れるだろう。浅井さんに知られても構わない。


 大沢はシートに座りなおし、キーを回した。

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