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JOY  作者: co
第5章・ライムグリーンの悪魔
50/130

 タンデムシートとは言え、バイクには生まれて初めて乗る。

 本当にめちゃくちゃ飛ばしている。容赦ない。

 自力で体勢を維持、なんて不可能だ。

 シート横についてるグリップとかいう取っ手を掴んでいても、絶対振り落とされる。

 というか、振り落とす気じゃないだろうか。

 死ぬ。風圧に耐えられない。落ちる。

 ごめん。

 と、結局浅井はバーテンのブルゾンの脇を握った。

 その途端少しスピードが緩み、反動でうっかりバーテンの背中に頭突きをした。

 その後は比較的速度を落としたようだ。


 10分ほどで学生アパートらしき小さな建物の前に到着した。

 バーテンが肩越しに浅井を睨み、降りて下さい、と言った。

 そう言われても、ガチガチに体に力を入れていたので簡単には体が動かない。

 ごめん、とヘルメットの中で呟いて、やはりバーテンの肩に掴まり、よれよれと地面に降りた。


 ああ、すごかったなぁ……。

 怖かったけど結構爽快なものだわ。うん。いいストレス解消になりそうだ。

 と冷静なつもりでヘルメットを外そうとして、グローブを嵌めたままだったことに気付き、まずグローブ脱がなきゃ、と笑って片方外すと、その手が震えていた。

 その手を見て、さらに笑えた。

 すごい体験だわ。バーテン君のおかげで。

 とバーテンを見上げてから思い出した。


「あ!君島君だった!」

 完全に用件を忘れていた。

「206。ドア開いてるので行ってください」

「え?」

 開いてる?なんで?で、あなたは?行かないの?と訊く前に、

「俺はここでたばこ吸ってます。時間ないですよ」

 と言われ、改めて自分の用件を思い出し、バーテンにヘルメットとグローブを渡して走り出した。




 一応チャイムを鳴らしてからドアを開け、君島君?と中に呼びかけた。

 返事がない。

 勝手に靴を脱いで上がり、1Kの奥のドアを開けた。


 きれいに片付いた部屋の、右側半分を占めるベッドに君島はうつ伏せで寝ていた。


「君島君」

 もう一度呼ぶと、君島が顔を上げた。


 また目と鼻を赤くしてぼんやりしている。

 次の瞬間その目をバチっと開き、ガバっと上半身を起こした。


「浅井……さん」

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