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JOY  作者: co
第5章・ライムグリーンの悪魔
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「君島君のところに連れて行って」

「は?」


 これを逃せば、一生君島君に会えなくなるかも知れない。


「中川区でしょ?バイクで20分も掛からないわよね?」

「嫌です」

「5千円出す」

「嫌です」

「1万円」

「……」

「決まり!」


 ともだちでもないという君島君の頼みを2千円で受けたのなら、他人の私もお金で運んでくれるだろうと、浅井は読んだ。


「あなた、スカートじゃないですか」

「大丈夫よ。脚には自信あるから」

「なんですかそれ」


 バーテンが折れつつある。拒絶理由が弱い。

 追い討ちになるのかどうか、浅井が言葉を続ける。


「私も時間がないから、ちょっと行ってすぐ戻ってもらえればそれでいいの」


 バーテンがまだ躊躇っている。

「嫌だなぁ……。タンデム嫌いなのに……」

「タンデムって何?」

 バーテンがさらに眉間のシワを深くした。

 段々それが面白くなってきた。

「荷物だと思って」

「荷物の方がマシだ」


 多分、落ちた。

 だから浅井が笑って催促した。

「早くしないとこれ、倒しちゃうよ」

 足でバイクのタイヤを倒す仕草をしてみせた。


 やっとバーテンがバイクの準備を始める。

 後部のステップを両方倒して、浅井にヘルメットとグローブを渡した。

「私が被るの?」

「飛ばしますから」


 ふぅ~ん。とヘルメットを被り、グローブを嵌めると、バーテンは既にバイクの方向を変えてエンジンを掛け、シートに跨って浅井が乗り込むのを待っていた。

 乗せて、と簡単に言ってみたものの、足の掛け方から難しいわ、と浅井は悩んだ。

 右手でこっちのグリップを掴んで、左足をこっちのステップに乗せてください。

 バーテンが親切に説明してくれた。

 そこまでは親切だったが、走行中は俺に掴まらないでください、自力で姿勢を維持して下さい、と指示された。


 バーテンが一度スロットルを吹かした。そしてギアを落とし、右を見ながら、今度は慎重にスロットルを開け、重さと速さを確かめながら駐車場から通りに向かう。


 そしてあっと言う間に大通りに合流し、車の大群に飲み込まれた。

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