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駐車場の車の枠内にバイクを止め、エンジンを切ってサイドスタンドを出した。
明るい日中に間近で見ると、巨大なバイクだ。
乗っているバーテンも巨大だ。
ヘルメットを脱いでグローブも脱いだ後に、浅井と目が合った。
バーテンも先週末の客を覚えていたようで、軽く会釈をした。
あら。覚えててくれたんだ。じゃ、もしかしたら今君島君が来たら案外助け舟を出してくれたり?
……しないよねぇ。
と、浅井も軽く会釈を返した。
それにしても遅い。
と浅井がきょろきょろと視線を動かした。
来るんだろうか。来るよね。
君島君が、来るって言ったんだから。
来るよね、君島君。
浅井はじりじりと待っている。
バーテンもぐるりと駐車場を見回した。
二周見回してから、もう一度浅井を向いた。
じりじりしながらも、視線に気付いて浅井もバーテンを見上げた。
それから、バーテンが浅井に訊いた。
「浅井さんという方、ご存知ないですか?」
浅井は少し口を開けて、硬直した。
返事がないのでバーテンが首を傾げて
「すいません。俺も顔知らないので……」
と、首の後ろを掻いた。
あ、もしかしたらバーに何か忘れ物でもした?私の名前入りのものを?
とにかく慌てて名乗った。
「私です。浅井です。あの、何か、」
今度はバーテンが硬直した。
え?何?と浅井も硬直に付き合った。
そしてバーテンは少し眉をひそめて、ブルゾンの内ポケットから袋を取り出した。
「君島から本預かって来ました。
あなたにお返しすればいいんですね?」
バーテンは、文庫本を差し出した。
浅井はまた口を開けて硬直した。