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その姿に励まされながら見つめていると、バイクが交差点の右折レーンで止まった。
おや?この前は直進したと思ったけど?
といぶかしんでいるうちに、バイクはウィンカーの方向に曲がった。
そして右折するのかと思いきや、Uターンしてガードレールの切れ目からコンビニの駐車場に入ってきた。
あら?ここに用事?
あら。なんて偶然。
そして、はっと息を飲んだ。
バーテンのあのシンプルで強い論理で君島君を説得してもらえないだろうか。
いや、無理だよね。
と一瞬で却下した。
だいたいどうやって君島君に、私のことを覚えていないかもしれないバーテンを紹介するのだ。
バカだなぁ私。
いいんだ。大丈夫だ。ともだちなんだから。
と繰り返し考えて浅井は自分に暗示を掛ける。
それにしても遅い。休み時間がなくなってしまう。
説得する時間がどんどん短くなる。
そしてふと気付いた。
もしかしてそれを狙ってたりして。
ぎりぎりに来て、じゃあねって。
そしてそれっきり。
そんな……。どうしよう。
どうする?バーテン君ならどうしますか?
浅井はバイクを見ながらずっと悩んだ。
「え?ちょっと、あれ、ジガーレイのバーテン?」
「ええええ!!!なんで?え?」
「浅井さん、すごくない?!」
「バカじゃないの!ここ通学路でしょ!この前だってこの時間通ったじゃないの!」
栗尾が水を差し続けているが、一向に熱は冷めない。
「だって二次会の時、浅井さん外でしゃべってたよね?」
「ね~!!!見た見た~!!!バイクのところでね~!」
「それで大沢君が……」
その後は栗尾に遠慮して続けない。
最後は田村。
「大沢いなくてよかったよ。あいつこんなの見たら……」
その大沢は、道を挟んだ真向かいで見ている。