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JOY  作者: co
第5章・ライムグリーンの悪魔
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「いや~、俺、あんなにきれいな人だったとは気付かなかったよ!」

 浅井がいなくなり、田村が大声で得意気に話し始めた。

「でもキレイって言ってもなんていうか、やっぱりねぇ?」

 反論にならない反論で栗尾が話題を遮る。

「だったら普段からちゃんとしろっていうのよね!」


 しかしそれを無視してさらに話題が沸騰する。

「そうよね!私も驚いたもの!大沢君がアサイサンって呼ばなきゃ気付かなかったわ!」

 大沢と浅井のデートを目撃した事務員。

「そうそうそれと!あの女の子みたいな男の子!びっくりするぐらい可愛いの!」

 浅井が会社帰りに君島と喫茶店に行った後をつけた事務員。

「それ。その超可愛い男に、大沢は無様に投げられたってわけさ」

「信じられな~い!ていうか意味わかんない!」

「俺もさ、超可愛いから男だって気付かなくて、それなのに大沢が胸倉掴むからさ、必死で止めようとしたわけよ!」

 微妙に田村の演出が加わる。

「それがさ、確か、女みたいな顔して、って大沢が言ったんだよ。それで俺びっくりして、だって女だとばっかり思ってたからさ、それでびっくりしてるスキに、大沢があっさり投げられてたんだよな」


「あら……。すごく可愛いわ」

「ね~。あんな可愛い顔して、あんなに大きい大沢くんを投げるほど強いのね」

「紹介して欲しいわ」

「何言ってんの?あんたたち。だいたいどういう付き合いかわかんないじゃない?」

 栗尾が何が何でも話題を切り裂こうとする。

「まぁ、その女みたいな男がこれから来るんだからさ。どういう付き合いかわかるんじゃないの?」

 田村が窓を指差した。

「つ~か、男だってだけで問題だけどな」




 昼休みは0時から1時まで。

 この時間内に君島君を説得できるだろうか。

 浅井はタバコの自販機の横で俯いて考えていた。


 前の大通りの往来で、太い排気音に気付いた。

 その音を覚えていたわけではないのだが、なんとなく目を上げた。


 そして目に入ったのは、ライムグリーンの大型バイク。


 あのヘルメット、あのブルゾン。

 バーテンだ。

 バーテンがバイクで通り過ぎていく。


 その偉そうで自由そうな姿を見て、凝り固まっていた悩みが溶けた気がした。


『俺が不愉快だったから』

 ネコのことをバーテンはそう言った。

 そして私もシンプルに強くなろうと思ったはずだ。

 そうだ。

 私は君島君のともだちになると言った。

 彼女たちの一員じゃなく、ともだちになると言った。


 彼女たちの一員だったら別れることもあるだろうけど、

 私はともだちなのよ。

 あなたのともだちになる資格だって充分だったじゃない。


 うん。また、絶対会う。

 絶対ともだちはやめないわ。


 浅井は何度も頷いた。

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