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JOY  作者: co
第5章・ライムグリーンの悪魔
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 大沢の予想通り、土曜日の一件は週始めの事務所の一大ニュースになった。

 上司も含めた浅井以外の全員が小声で噂している。

 なにしろホットな話題であり、数時間後に間違いなく展開するのだ。

 浅井以外全員そわそわしている。

 そしてそれに気付かないのも、浅井一人だった。



 周囲に目を配る余裕がない。仕事も手につかない。

 君島君を、どう引きとめよう。何を言おう。

 キーボードに両手を置いて、その間を凝視して、仕事をしている振りをして固まっている。

 まず謝らなきゃ。

 浅井はずっとそればかり考えている。



 昼近くに、田村が来た。大沢はいない。

 浅井が気付いて会釈をすると、田村が意味ありげな笑みを浮かべた。

 浅井はそれを無視した。

 嫌な気持ちがした。

 まるで秘密を共有しているかのような。

 もっと言えば、共犯意識を強制されているような。


 笑えるわけがない。

 あんなふうに君島君を傷つけておいて。

 私は大沢君も許してないのよ。

 自分も許せない。


 やはり浅井は、自分の両手の間を凝視していた。



 そして正午になり、浅井が席を立ってエレベーターに向かった。

 普段なら向かいのコンビニに行く社員が必ず数名いるのだが、今日は誰も動かない。

 全員窓からそのコンビニを見下ろすつもりだからだ。

 浅井は一人でエレベーターの扉を閉めた。

 その不自然さにも浅井は気付かなかった。



 横断歩道を渡りコンビニの前で立ち止まる浅井を、会社のビル横から大沢が見ていた。

 車で到着したばかりだが、田村の車があるのをみて事務所に上がるのを止めた。

 田村の車がなくても上がるつもりはなかった。どうせ噂は広まっているだろうから。

 しかしここで男を待つ浅井の姿を見るのも辛い。

 それでも来ずにはいられなかった。


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