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翌日浅井は一日中家にいた。
誰にも電話をしなかった。誰からも電話は来なかった。
大沢からも君島からも、連絡はなかった。
一晩寝て起きて考えても、大沢が悪いとしか思えない。
そして君島を傷つけた罪悪感が募る。
自分と大沢で君島を傷つけた。
君島は昨日、それでなくても充分傷付いていたというのに。
明日は謝ろう。
精一杯謝ろう。
許してもらえるまで謝ろう。
大沢も一日中家にいた。
飲まず食わずで。
ベッドの上で呻きながら、丸一日後悔していた。
何もかも後悔していた。
どこから後悔していいのかわからないぐらい後悔していた。
あんな醜態を晒したことも初めてだった。
肉体労働をしていることもあり、自分の体力には自信があった。
体も大きい方だ。
けんかで負けたこともないし、そうけんかを仕掛けられることもなかった。
それをあんな、女みたいに小さいやつにあっさり。
浅井の前で。田村の前で。
ここに来るまでの車中で田村は無言だった。
別れの挨拶も一言だった。
つまり
月曜日には知られ渡っているだろう。
浅井と大沢のことを知る者全てに。
分ってはいたが、口止めはしなかった。
しても無駄だからだ。
口止めした、ということも知られ渡るのがオチだ。
どこから後悔するって、
あの日チビにナンパされた浅井さんに会ったところからだ。
キューピッドなんてとんでもない。
あいつが疫病神だったんだ。
キャメルのコートを着た、悪魔だ。