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JOY  作者: co
第4章・枯葉の公園
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 浅井が立ち木から離れ、君島の横にしゃがんだ。

「僕だって彼女を利用してるしね」

 君島は浅井を見ずに続けている。

「だから僕は、」

 浅井が被せるように言葉を続けた。

「だから彼女たちが嫌いなんでしょ?」


 言葉を奪われた君島が、浅井を見下ろした。

 やっと目があった君島に、浅井が微笑んで言った。

「だから嫌よ。彼女たちの一員になるのは」


 君島が一瞬目を丸くして、その目をぐるりとまわしてから、あ、と息を吐き出した。

 そして髪をかきあげて空を仰いでから浅井を向き直って言った。

「だから、真ん中省略しないでよ!」

 君島は、赤い目のまま笑っていた。

 今は省略してなかったでしょ?と浅井が言うとさらに笑った。

 ざっくりカットしてるよ。まったくもう。


 笑いながら君島もペットボトルを開けた。

 その笑顔にほっとして、浅井が立ち上がったのだが、足首がバキっと鳴った。

 君島がまた吹きだして、運動不足だよ!とさらに笑った。

 そのあとしばらく笑い続けた。

 笑いすぎよ、と浅井が抗議しても君島は笑っていた。



 君島君を見て微笑んだ私の表情が、彼女たちに似ていたのかも知れない。

 反射的に君島の笑顔が凍ったのかも知れない。

 そう思いながら、浅井は暖かいお茶を両手で握った。


 この子は笑っている方がいい。

 こんなふうにキラキラ光る笑顔が一番いい。

 そしてしばらくして、君島が浅井を見上げた。


「浅井さんは、変な人だね」

 失礼ね、と笑顔で睨む。君島が笑ったまま続けた。

「こんな話聞かされても、引きもしなきゃ同情もしないんだ」

 浅井は笑顔を引っ込めなかった。

 君島も笑顔でそれを覗き込んだ。


「僕の、友達にはなってくれるんだよね」

 浅井が頷いた。

「僕ね、友達少ないんだ」

 そんなネガティブなことを言いながらも、君島はやはり晴れやかな笑顔を見せる。

「しかもね、僕の友達ってのは、みんな友達が少ないやつらなんだ」

「そう。じゃあ資格充分だわ、私」

 苦笑してまたペットボトルに口をつけた。

「それにね」

 君島が、嬉しそうな顔で続けた。


「僕を好きじゃないって言ったしね。それで充分」




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