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JOY  作者: co
第4章・枯葉の公園
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 一瞬で君島の頬が紅潮した。

 それが解だった。

 浅井は微笑んだ。

「帰るわ。またね」

 そう言って踵を返した。


 え!待って!と後ろから君島の声が聞こえていたが、かまわずドアを開けて店を出た。

 走り去るつもりはなかった。

 追いかけてこなければそれでもいいと思っていた。


「浅井さん!」

 君島の高い声が聞こえた。

 振り返ると、目を大きく開いた天使のような少年が、自分に向かって駆けてくる。

 その表情は知ってる、と浅井は思った。

 初めてコンタクトショップの鏡越しに見た顔と同じ。

 女の子だと思った。可愛い女の子の困った顔。

 ごめんなさいって謝ってくれたわね。

 浅井は微笑んで、走ってくる君島を待った。

 もうこれで最後だと思ったから。



「さっきの、どういうこと」

 君島が浅井の目の前で止まり、訊いた。

 私に言わせるの?赤くなったくせに。

 そう思って笑った。

 笑っていないと、涙が落ちそうだった。


「私を彼女たちと比べたんでしょ?」

 あの冷えた瞳は、君島の彼女たちに向けられるものだ。

「私も彼女たちの一員になれるかどうかの試験だった?」

 浅井も大沢という相手を得て、その資格は充分だったのだ。

「ならないからね。私、そんなに君島君好きじゃないよ」

 もしあの冷えた瞳を見てなければ、今頃どうなっていた?

「友達にしかならないから」

 どうにもなっていない。私はこの子を利用したりしない。

「それがだめなら、ここでお別れ」

 この子とそんな付き合いは、したくない。

「そういうことなの」

 この子にそんなふうに利用されたくない。


 悪いことだろうか、と来る前には思っていた。

 

 冗談じゃない。




 この子をそんなふうに利用したくない。




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