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JOY  作者: co
第3章・琥珀のバー
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「なんてこと言うの!ここ飲食店なのよ?営業妨害って言われてもおかしくないわ!」

 店の入り口からも遠く離れた駐車場の角で浅井が大沢を叱り付けた。

「信じられない!ここだってきっとうちの顧客なのよ?」

 浅井の会社の業務内容は業務用厨房機器のリース、販売、修理、メンテナンス。

 主に代理店を通して一般飲食店に設置されている。

 大沢の仕事は修理メンテナンス。この店に来る可能性だってある。

「いくら酔ってたってそのくらいの自覚もないなんて、」


 大沢は無表情で聞き流している。

 そんなに酔ってはいない。ただ、いらついてるだけ。

 その衝動の延長で、目の前で真っ直ぐ大沢を見上げて怒っている浅井の両肩を掴んだ。

 浅井が息を飲むと同時に、大沢がその腕を引き寄せて顔を近づけた。

 浅井が顔を伏せて腕から逃れようともがくと、大沢が更に強く肩を掴みなおす。

「浅井さん」

 大沢が名前を呼んだが、浅井は尚一層抵抗した。



 何これ?

 何?大沢君ってこんなことする人?

 どういうこと?これ、どういう意味?

 とまどいながらも、浅井はわずかに屈辱を感じていた。

 たった一回一緒に街を歩いただけで、どうしてこんな扱い?

 なんでこんなに強く掴まれなきゃならない?

 さっきバーテンを罵ったことよりも、浅井は今掴まれている肩の痛みで大沢を見損なっていた。


 これだって暴力の一種だ。

 唇を噛んで、力を入れてその両手を振り払った。

 完全に拒絶されて、大沢が何かを言おうと息を吸った。

 その時カチっと勝手口が開く音が聞こえ、誰かが出てくる気配がしたので、大沢は手を下ろして吸った息を吐いた。



 そして、出てきたのはヘルメットを下げた、あのバーテン。



 二人の姿は目に入っただろうに、バーテンは顔も向けずに真っ直ぐ駐輪所に向かった。

 とっさに浅井も大沢に目もくれずに、バーテン目指して走り出した。

 迫ってくる浅井の足音に気付いているだろうに、バーテンは振り向きもしない。

 その浅井の後姿を大沢はしばらく眺めていた。

 そしてとうとうバーテンが浅井を振り向いたところで、踵を返した。


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