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しばらく歩いて到着したのは、繁華街から少し離れた街角の小さな一軒屋。中のライトが暗いせいか窓が琥珀色に見える。
ドアを開けると暗い店内に小さく鈴が鳴る。いらっしゃいませ、と確かに中々の男前が案内に来た。
「カウンターに行きましょうよ!」
と突然後ろから栗尾が浅井の腕を掴んで、ぐいぐいと進んでいった。
浅井は少し戸惑ったが、きっと酔っているんだろうな、と歯向かわずについていった。
大沢もその後ろを追った。
店が小さいせいもあるのか、結構混んでいて席がそんなに空いてない。
ダーツのコーナーもあり、椅子のないスタンド席もあるので立っていてもいいようだ。
カウンターは2席しか空いていない。大沢があぶれた。
浅井もさすがにこの席を大沢に譲る気はなかった。そこまでお人よしじゃない。
一次会で大沢が栗尾とずっとしゃべっていたことが、やはり浅井は面白くなかった。
この店にきてまでそんな姿を見せられなくてもいいでしょ。
浅井はそう思っていた。
大沢も腹を立てている。
そんなにカウンターがいいのか?俺を立たせたままでも?
大沢は少し酔っていて、いらいらしていて、よく考えれば浅井に原因はないのに、腹を立てていた。
そして少し位置が高いスタンドテーブルに腕を乗せて、目当てのバーテンを探した。
カウンターの中には店員が二人いて、一人は接客中。
一人は横の作業台でオレンジを切っているところ。
そのオレンジを切っているメガネの店員が、かなりの長身だった。
恐らく、彼。
切ったオレンジをグラスの口に差し、トレーに載せてフロアから戻ってきたイケメンに渡した。
それから新たな客3人の顔を確かめるように眺め、
「ご注文は?」
と言った。
低い、掠れた声だ。
「私、スクリュードライバー!」
栗尾が、ついさっき彼がオレンジを差したカクテルを簡単に頼む。
「ホワイトレディ」
浅井もいつもの好みを口にする。
大沢が口を開かなかった。
「お客様は?」
バーテンが催促した。大沢はしばらくバーテンを睨んでから、言った。
「ビール」
「バド、クアーズ、ハイネケン」
「クアーズ」
「はい」
バーテンが頷いた。