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「すご……」
「あざやか……」
結局全員、信号で渡らずに一部始終を見ていた。
浅井も口を開けてみていた。そして、小さく、すごい、と呟いていた。
大沢がそれに気付いていた。
「今のって、ジガーレイのバーテンじゃない?」
「え?あのオカマ?」
「違うって!あんなオヤジじゃなくて、学生のバイト君がいるじゃん?」
「ああ!あの超でっかい?」
「そうね、今の子超でっかかったしね」
「ジガーレイ?」
浅井が思わず訊ねると、若い同僚が勢い込んで教えてくれた。
「そうです!ちっちゃいカクテルバーなんですけど、店長がオカマっぽいんですけど、ほかのバーテンが結構イケメンで、さっきのバイクの子も多分そうなんですよ!おまけにあの子って、名大生なんですって!」
「へー……。詳しいのね」
「やだ!私じゃなくて香子があそこばっかり通ってるから、付き合いですよ~」
「あ、なによ、紗絵があのバーテン狙いなんでしょ!」
「違うわよ!どうせカクテル飲むならイケメン見ながらって思ってるだけよ!」
「嘘!あんたってあのバーテンにばっかりオーダーするじゃない!」
「あの子のシェイクが一番上手なの!」
「何やらしいこと言ってんの!」
「え~!意味わかんないんだけどっ!」
思わず吹きだしたが、信号が変わったので浅井は横断歩道に足を踏み出した。
その時に後ろから大沢の声が聞こえた。
「戻るわ」
浅井が振り向くと、大沢は踵を返してビルに向かっていて、どうしたのよ!と栗尾が呼びかけていた。
どうしたのかな、と思いつつ、浅井はそのままコンビニに向かった。