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「何それ?嘘でしょ?本当に大沢君だった?」
「大沢君は絶対大沢君だったんだけど、」
「なによ、浅井さんじゃなかったの?」
「それが……浅井さんだったのよ。だったんだけど、」
「何なのよ!はっきり言いなさいよ!」
月曜日の事務所でのトップニュース。
一番大きな声を上げたのが栗尾だった。
それはそうだろう。金曜日の夜は栗尾が大沢を独占していたのだ。
それがその翌日には浅井に盗られたとなると、よく考えればみっともないことだ。
しかも栗尾には金曜の夜の後半の記憶がないので何があったか皆目見当がつかない。
「だって、メガネ外して髪も下ろしてたから全然印象が違ってて、でもよくよく見るとやっぱり浅井さんだったのよ」
「そんなに変わるかなぁ?」
「それから、それだけじゃなくて、すっごい可愛い男の子に抱きつかれてた」
「え!」
「女の子みたいな男の子で、もうすっごい可愛い子で、なんかもう浅井さんもやせててスタイルいいからすっごいお似合いで、とにかく大沢君ともお似合いで、あたしもう疲れちゃって……」
「何言ってんの?」
「本当なのよ。私も疲れちゃったの。見ればわかるわよ」
「ね~。疲れたよね~」
昨日二人を見た事務員二人が顔を合わせて頷いた。
嫌だわ、と栗尾は自分の机に戻り、ネイルのデコを撫でる。
クリスマスまでに大沢と付き合おうと思っているのに邪魔が入った。
でもまだ時間はあるから大丈夫。
これまで一人でクリスマスを過ごしたことはないの。
だから今年も大丈夫。
栗尾には自信があった。