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JOY  作者: co
第2章・赤と緑の街
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「や!また会えたね!」

 白いダウンジャケットを着た君島が浅井の腕を取った。

「へ?君島君?!」

「秋ちゃんって呼んで」


 突然の出来事で、浅井はあっけにとられている。

 大沢が出てくるのを待ちながら、周囲をぐるりと眺めていて、ダイナミックなランニングフォームで逃走している白い人がいるな、とは思っていた。

 それが予想以上の速度で、浅井の腕を掴む直前までそれが君島だとはわからなかった。


「え?君、……秋ちゃん?」

「うん!待った?」

「へ?」


 そして、君島を追ってきた中年の男女が息を切らして、声が届く距離まで追いついた。

「まて!小僧!」

 君島がくるりと半回転して、浅井の陰に隠れた。

 へ?とまた浅井が君島を見た。

「あんた、この、小僧の、なんだ?」

 中年の男が浅井に訊いてきた。

 話しかけられたことに驚いたが、それ以上にその口のきき方が不快だったので答えなかった。

「あんた一体、この小僧と、どういう関係なんですか!」

 激しい息遣いの合間に怒鳴られる。

 君島が苦笑して、浅井の前に出て男と応対しようとしたが、浅井がそれを右手で断って、言った。

「あなたに答える義務はないでしょ」

 男が、なにを!とまた怒鳴りかけたが、女が男の袖を引いた。

「みっともないことやめてよ!普通のカップルじゃないの!何考えてんのあんたは!

 私買い物に来ただけだって言ってるでしょ!」

「ふざけんなよ!この小僧前にも見たぞ!」

「私はないわよ。ごめんなさいね、お兄さん」

「いえ。いい運動になりました」

 君島がにこりと答えた。

 なにを!とまた一歩踏み出そうとした男を、浅井が睨んだ。

「邪魔しないで下さい」

 君島を睨み続ける男を、女が引っ張って行った。


 はぁ~、と君島が、荷物を降ろしたように肩を落とし、ため息をついた。

「何?今の」

「聞かない方がいいよ」

 浅井の簡単な問いに笑って君島が即答した。

「そういえば昨日の彼氏は?もしかして今デート中?」

 顔をしかめたまま浅井が頷くと、え、本当?僕がいちゃまずいね、と立ち去ろうとした。

「ちょっと待って。携帯ぐらい教えてよ」

 君島がまた苦笑して、電話を取り出し、簡単に番号交換をして、じゃ、と右手を上げて走り去った。




「携帯なんか出して、どうしたの?」

 直後に大沢が店を出てきた。

「うん。イタ電。ごちそうさまでした」

「あ、はい。いえ。イタ電って多いんですか?」

「ううん。そうでもないよ。大丈夫。あの、大沢君って、赤が好きなの?」

「は?」

「ブルゾン、派手な赤だし。結構赤系が多いよね?」

「ああ、そうかな。はっきりした色だから」

「黒は?」

「浅井さん黒多いっすよね」

「無難な感じだし」


 よし、ごまかした。と浅井は頷いた。

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