表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JOY  作者: co
第2章・赤と緑の街
17/130

 昼間でもクリスマスムードの街は煌びやかで、店の大きなウィンドウの前に鮮やかなポインセチアが並べられ、白いシクラメンもそれに沿い、濃い緑がそれを縁取る。

 歩く人々も楽しげで、隣を歩く大沢も楽しげで、クリスマスマジックなのかなぁと浅井は分析している。

 分析中に気付いたが、通り過ぎる女子がほとんど大沢に振り向く。

 派手なブルゾンにゆったり目のブルージーンズ、長身小顔で短い茶髪。

 ぱっと見で目立つ上に、じっくり顔を覗き込んでも黒目がちの整った童顔。

 そうだった。大沢君は、事務所人気筆頭イケメンだった。その筆頭イケメンは、楽しげに延々と浅井に話しかけている。

 浅井さん、歩くの速いっすよね。

 いつもCDで買うんですか?

 てか、トランス以外は何聴くんです?

 浅井も考え事をしながらも、質問には次々と答えて、ビル8階にあるCDショップを目指した。


 その二人を、会社の同僚事務員二人が見ていた。

 やはり目立つ大沢に気付いて、声を掛けようと走り寄ってから女連れに気付き、

 あら、やだ、大沢くんってフリーだったはずなのにどうして?誰あれ?

 とその後をつけた。

 身長はお似合いのサイズだけど、モデルみたいなスタイルだけど、かなりのロングヘアだけど真っ黒よね、きっとそのせいで顔も白く見えるし小さく見えるけど、でもほら全体的に地味な感じね。

 と小姑のように判定した連れの女が浅井だと気付いたのは、昼前に喫茶店に入ってからだ。

 テーブル一つ離れた場所を選び、二人の会話に聞き耳を立てていた時に、大沢が大きな声で相手の名前を呼んだのだ。


「え!浅井さん、ダフトパンク持ってんの?!」


 事務員は、グラスを持つ手を離してしまった。ゴンと鳴ってジュースが少し零れた。

 もう一人の事務員は、俯いて固まった。

 しばらく無言のまま固まった後、二人はゆっくり目当てのテーブルの方を覗き見た。


 そう言われればあの長身はまさにお局サイズ。

 あれにメガネをかけて髪を縛れば、……

 そうなの?今ちょっと想像できないんだけど、そうなのね?きっと?

 でもたったそれだけで、メガネと髪だけで、人ってそんなに変わるもの?


 事務員はその衝撃を受け入れるだけで疲労困憊し、食事を終えて出て行った二人をさらに追う気力を失っていた。

 ただ、目ではそれを追っていた。

 大沢が会計をして、浅井がそれを先に店外に出て待っている。

 正にカップルですね。デート中のカップルですよね。

 長い黒髪が風になびいて、細い指でそれを押さえている。ただそれだけの仕草が、モデル体型のせいか美しく決まって見える。

 事務員たちは、それを目の当たりにするだけで脱力していた。

 そのモデルのような浅井の元に、天使のような少年が駆け寄ってその腕を引いたのを見ても、


 ああ、似合うんじゃない?


 と、頷いた。


 驚くのに疲れたのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ