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JOY  作者: co
第2章・赤と緑の街
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 翌朝早く、大沢が浅井の部屋の前に立った。

 チャイムを鳴らし、ドアが開けられ、

 現れた浅井を見て大沢は用意していた挨拶を飲み込んだ。

 浅井は昨夜のようにメガネを外して、長い黒髪をほどいて流している。

 黒のショートコートが白い肌を強調し、細身の長身はモデルのようだ。


 見惚れてぼんやりしている大沢に、浅井が首を傾げながら行き先を尋ねると

「どこでもいいですよ」

 と最も困る答えを返された。しかしまぁ予測範囲内。

「朝だし、モーニング食べながら考えようか」

 はい!と大沢が喜んだ。


 大柄な大沢の車は紺のRV。

 ただでさえ車に乗ることがめったにない浅井にとって、こんな背の高い車は見たことはある程度の認識しかない。

 乗って、と言いながら軽く運転席に乗り込んだ大沢の動作を見て、あ、ドアを開けてあそこを掴んで、と学習したものの、ステップに乗せる足を間違えて考え込んだりした。

 大沢がそれをじっと笑いを堪えてみているので、浅井はちょっと睨んだ。

「怒んないでください」

 とやはり大沢が笑った。


「どの方面に向かいます?」

「街にしようか?とりあえず街中の駐車場に停められたら後が楽よね?」

「はい。じゃ、栄方面に?」

「はい」

 そして車は出発した。


 車を運転しないので、浅井は車道の真ん中を走っているのが怖い。

「免許あるんですか?」

「あるけど、ペーパー」

「車乗る気はないんですか?」

「う~ん。車買って持つお金もなかったし、車なくても困らないし……」

「そんなもんすかねぇ。じゃあ、困ったら俺に言ってくれれば、買い物ぐらい付き合います」

 車道が怖いのでずっと窓から外を見ていた浅井は、ちらりと大沢を見上げた。

 気付いた大沢が顔を向けたので、ありがと、と笑った。

 すると大沢が照れて頷いた。


 多少朝が早くても、モーニング文化の発達した地域なので喫茶店は山のようにある。

 いつも満車の街中の駐車場が空いていたので、そこに停めて二人でうろうろと探した。

「ここの3階の店、満腹モーニングって書いてます」

「満腹?そんなに食べる?」

「俺は食べますけど。浅井さんは?」

「私、朝無理。でも大沢君食べるなら私のも上げるし」

「え……。それじゃ満腹モーニングじゃ多過ぎるかな」

 そしてその上の階の、自然派モーニングの店のドアを開けた。

 メニューを見て、自然派じゃ足りなかったかなぁと大沢が呟いたので、また後で別のところで食べたらいいじゃない、お昼に混む前の方がいいし、と浅井が笑った。

 大沢もまた笑って頷き、じゃ次の店探しましょうとタウン誌を持ってきた。

 そのタウン誌の新譜紹介ページで大沢が手を止め、このCD欲しい、と呟き、え?それ?私それじゃなくて、今度出るケミカルが欲しいの、と浅井が言った。

 趣味近いみたいですね。じゃ、このあとCD屋に行ってみます?

 と、予定が決まった。

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