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ベッドの上の大沢は、窓際に佐々木社長が置いていった花束が二つ無造作に置いてあるのを眺めた。
それに構わず田村がまだしゃべり続けている。
「つぅかさぁ。お前、浅井さんが好きだとか言ってただろ?それがさぁ」
え?俺そんなこと言ったっけ?
「お前そんなこと言うキャラじゃなかったよな?」
キャラとか言うなよ、と思いながら大沢は目を逸らす。
浅井さんを助けたかった。
俯いて俺のベッドの上掛けを握り締めている姿が可哀想だった。
大沢はその時の自分を目を閉じて思い出す。
多分俺の今の思いで、全部解消する。そう確信していた。
誰も文句言えないだろ?
そう思った。
『今二人とも助かったってことだけでも満足してます』
本当にそう思っていた。
そう思えるのはなぜかって、浅井さんと三日過ごしたからだ。
正確には、
先輩の話を聞いたからだ。
大沢は大きくため息をついた。
浅井さんを助けたいと思った。
怪我すらさせたくない。
それなら自分が死んだ方がマシだ。
自分の命よりも、浅井さんの方が大事だ。
って、
思ったんだろうな、先輩も。
大沢は薄く目を開けて、少し笑った。
先輩。俺たちは勝手だったな。
その後独り残される浅井さんのことは、全然考えてなかった。