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大沢の病室では、大沢の母は佐々木社長にもらった花を生ける花瓶を調達しにどこかへ出て行った。
佐々木社長と田村社長はたばこを吸いに喫煙所を探しに行った。
残ったのはベッドの上の大沢と田村だけになった。
田村が椅子に腰掛け、ため息をついた。
「しっかし……大変だったな。つか、大事件だよな……」
「ん~……。でもこれで全部解決すんなら、いいんじゃね?」
「え?そう思える?腹刺されて?」
「まぁ……。浅井さんが刺されるよりはマシだろ」
「うっへぇ……。まじで?」
「何が?」
「お前……変わったな」
「どこが?」
「そういう……なんつーか、女の代わりに刺されて笑ってるような熱い男じゃなかったっつーか」
「別に笑ってねーし。熱くもねーし」
「その行動自体がさ。庇って刺されねーだろ?前のおまえなら」
「……そんなことね~だろ?てかお前ならどうするよ?庇うだろ?」
「俺そんな事件起こすような男じゃないもん」
「仮の話だろ?仮の!」
「ありえね~よ。現実に起こしたお前が、だから変わったんだって」
「ムチャなこと言うなよ……」
大沢は少し、栗尾とホテルに行ったことが今回の一因になっているような気がしている。
しかしそれは口が裂けても言わない決意をしている。
栗尾とは実際何もなかったのだが、とても信じられないだろう。
一緒に食事をして、一緒にホテルの一室に入っているのだ。
しかし何もなかった。
自分はそこを出て浅井さんの部屋に行っている。
多分堂々と言い張れる。
そして、どうして信用しないんだ、と浅井を責めることになるだろう。
大沢はそれを避けたいと思っている。
もし栗尾が言い出してもシラを切る。
浅井さんのために、栗尾を犠牲にしてもいい。大沢はそう思っている。