11
ええええええ~~~~!!!!!!
浅井の甘い涙は一瞬で引っ込んだ。
「なんで泣いてるんですか?」
大沢が心配そうに訊いてきた。
え~~~~~どうしよう……!答えられるはずがない……!
「あの、もしかしてさっきの栗尾の言ったことですか……?」
やだ~~~~!そんなことで泣かないし~~~!バカにするな~~~~!!
「すいません、俺、」
「勝手によそのテーブルに来るなよ」
酔っ払った君島の声がした。それを無視して大沢が続けた。
「栗尾、悪酔いしてるんで、気にしないでいいっていうか、」
「こっちのことに口を挟むなって言ってんだよ!」
君島が怒鳴った。
「だいたい何だよ!あんなこと言わせっぱなしにしておいて!てか全然浅井さんに当てはまらないし!」
浅井は驚いて顔を上げた。そして大沢は君島を見下ろして、諌めた。
「君、女の子でしょ。ちょっと言葉が乱暴じゃないの?」
なんだと!と君島が椅子を倒して大沢に向かおうとした。
言っちゃったぁ……と浅井がため息をついて立ち上がり、教えた。
「失礼よ、大沢君。男の子なんだから」
大沢が沈黙しているうちに、君島も立っていることだしこのタイミングででましょう、と浅井がバッグを持ち上げた。
「帰ろ、君島君」
「……うん」
浅井には周囲がよく見えないので、君島が浅井の手を掴み先導しようとした。
「あっ、浅井さん!」
大沢が浅井の空いている方の手を掴んだ。
「おっ、男ってなんすか!誰ですかこいつ!」
「こいつって言うな!さっき知り合って気が合ったから楽しく飲んでただけだ!」
間髪入れずに君島が答える。
「ナンパすか?!!」
「ナンパだよっ!!」
えええええ~~~~????そうだったのぉ~~???
また浅井は笑い始めた。
「なんでですか!今日だって断っておいて、」
「あ、君、断られたんだ?じゃ振られたんだろ!気付けよ!」
「俺一人じゃない!会社の飲み会だ!」
「じゃあ一人で誘わないお前が悪いんだろっ!」
君島が浅井の腕を握る大沢の手を払った。
「行こう!浅井さん!」
君島が浅井の腕を掴み、早足で立ち去ろうとした。
浅井は一度大沢を振り向き、やっぱり見えない、と笑った。
大沢は一人立ち尽くしていた。
自分の腕を払った君島の力が思ったより強かったことと、浅井が最後に向けた笑顔で動けなくなった。
そんな顔するんですか、浅井さん……。