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JOY  作者: co
第13章・アイボリーの母
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「あの、どうかしましたか?」

 病室の扉を開けて、田村が顔を出した。

「うん、田村君、浅井さんが来てくれてね、」

 大沢の母が浅井の片手は手を握ったまま片手で口元を押さえて言った。

 そして田村が浅井の顔を見て三度瞬きをした。


「浅井……さん?」


 あ、そうか。髪切ったんだった。と、浅井は涙を拭いて頷いた。

 田村がまだ絶句していると、病室の中から、入ってもらえ、と低いだみ声が聞こえた。

「そうね、こんなところで失礼しちゃったわね、どうぞ」

 と大沢の母も浅井の背を押した。


 個室の窓に背をもたれて田村設備の社長が立っていた。

 田村の父であり、大沢の雇い主で、浅井の会社の下請け会社の社長。

「おお。浅井さんか?ずいぶんイメチェンしたんだな」

 田村社長も驚いた顔をした。

 はい、と浅井は笑いながら頷いた。

「大沢、手術終わって後は起きるの待ち」

 田村社長はベッドを顎を上げて指した。

「動脈は切ってなかったからよかったけど、結構深くまで刺されてるんだってよ。助かってよかったよ」

 浅井は大沢の足元の傍に立っていた。

「浅井さんも切られたんだってな?その包帯か。大丈夫なのか?」

 浅井が頷いた。


 ごめんなさい、とまた大沢の母が呟いた。それを聞いて、田村が言った。

「だから違いますって!俺今朝大沢に聞いたんですよ!栗尾を妊娠させたのは大沢じゃないですよ!」

 ん?と浅井は振り向いた。

「浅井さんは栗尾の嘘なんか信用してないでしょ!ありえないって大沢が言ってたんだよ!」

 大沢の母が首を振った。

「聡が悪いの」

「だから!」

 田村の言葉なんか聞こえないように、大沢の母は涙を浮かべて続けていた。


「女の子に刃物持たせるようなこと、そんなことさせただけで、聡が悪いのよ」





 浅井の頭に、先輩の声が聞こえた。


 逃げるな



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